本記事では精神保健福祉士・野坂きみ子氏の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「こころの問題」についてひも解いていきます。

発達障害が取り沙汰されるなかで「見えていない事実」

大人の発達障害について知られるようになりましたが、私にはどうも納得いかないことがふたつほどあります。

 

大人の発達障害は、大人になってから発達障害であることがわかったということで、そのほとんどが、就職後明らかになります。大人の発達障害と言われ理解が進んでくると、30代、40代、あるいはそれ以上の年代の人も、ひょっとしたら自分は発達障害なのではないかと思うこともあるでしょうし、また診断のつく人も多くいると思います。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

しかし、これほど注目されるようになったのは、アルバイトでも新卒採用でも働き始めた時、仕事自体や人間関係でどうもうまくいかないと感じ、そのうまくいかなさが発達障害の特徴として認識されるようになったので、一層目立つようになったのだと思います。そのため大人の発達障害が問題となるのは、職場です。

 

どうも納得のいかないことのひとつは、職場においては発達障害の人だけではなく、周りの人も悩み苦しんでいますが、そのことはあまり知られていないということです。

 

そしてもうひとつは、最近は発達障害者への対応の仕方についてたくさん言われていますが、職場で問題となるまさにその時には役に立たないのではないかということです。

 

私は30年余り精神科を含めいくつかの病院の相談員をしてきました。その後3年ほど障害者の就労支援の仕事をし、現在はメンタルクリニックに勤めています。メンタルクリニックには、仕事上のことで精神的不調をきたし、受診する人が多くいます。発達障害の人もいますし、抑うつ障害の人もいます。

 

職場の人間関係で不調をきたす人もいますし、上司の圧迫やハラスメントもありますが、その中には発達障害と思われる人との関係で、うつ症状になり職場に行きたくない、行けない、頭痛や吐き気、不眠などさまざまな症状を呈し、休職やついに退職に至る人もいます。

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“発達障害かもしれない人”とともに働くこと

“発達障害かもしれない人”とともに働くこと

野坂 きみ子

幻冬舎メディアコンサルティング

「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」ーー大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。 長年、医療福祉相談員として働いてきた著者が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なこととは?

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