本記事では精神保健福祉士・野坂きみ子氏の書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「こころの問題」についてひも解いていきます。今回は、なぜ大人になるまで発達障害に気付かない人が多いのか、その理由について見ていきましょう。

「発達障害かもしれない」と、本人も周りも思っても…

後天的な身体障害の場合、たとえば事故で車いすが必要になる、腎臓機能障害で人工透析が必要となるなどの場合は、治療で休職し、回復後、障害手帳を取得し、復帰した時に障害者雇用で就労継続となるということはありますが、発達障害の場合はそうはいきません。

 

発達障害かもしれないという時点では、障害者の就労支援としては動きようがありません。本人の理解、受診、障害の受容と、障害者雇用の環境整備、それらは一様には進みません。

昨今では職場における発達障害の理解も進んでいる

昨今では職場における発達障害の理解も進んで、対応の仕方もたくさん紹介されるようになりました。また職場のメンタルヘルスを支援する会社も増え、EAP(Employee Assistance Program)を提供するところも増えてきました。

 

これらは雇用側である企業への支援です。発達障害の職員がいた場合、上司はどのように対応したらよいのかというノウハウを教えてくれます。

 

それは障害者雇用の場合や、上司などがその職員が発達障害の診断を受けていることを知っているのであれば、有効に機能するかも知れません。しかし、発達障害かもしれない段階では難しいです。

精神障害者への対応は、だれでもできるわけではない

実際に、発達障害者へのアプローチを、障害者雇用を前提としないで行うことは、精神科的な、半ば専門的な配慮を要求されるハイレベルな話です。精神障害者への対応はだれでもできるように思われているかもしれませんが、そう簡単なことではありません。

 

専門的知識だけではなく、その人の資質も大きく関係しますし、習得にも時間がかかります。また対応する人のストレスマネージメントも欠かせません。職場は仕事をする場所ですから、人的にも時間的にも余裕がないのが現状です。

 

全般的に、仕事でのストレスのリスクが指摘されており、ストレスチェックなども導入されています。当然ながら、精神的不調のある職員は、発達障害の傾向がある人ばかりではありません。

 

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“発達障害かもしれない人”とともに働くこと

“発達障害かもしれない人”とともに働くこと

野坂 きみ子

幻冬舎メディアコンサルティング

「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」ーー大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。 長年、医療福祉相談員として働いてきた著者が語る、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なこととは?

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