故信太郎の遺言書を発見。妻・愛子は安堵したが…
「お義母(かあ)さん、おはようございます」
亜季は、以前看護師として働いていたこともあり、信太郎が脳梗塞となって以降、夫の隼人に頼まれ、ほぼ毎日信太郎宅に通い、信太郎の世話を行っていた。隼人が亡くなってからは、生活のため、午後だけ市内の病院で看護師として働くようになったが、引き続き午前中は信太郎宅に通っていた。信太郎が亡くなってからも、一人暮らしとなった愛子を心配して毎日午前中に愛子宅に寄ってから職場に向かっていた。
「亜季さん、おはよう」
愛子は、信太郎が亡くなってから少し塞ぎ込んでいたが、今は週に1回程度は外出し、近所の友人宅に出かけたりしている。耳が少し遠くなったり、足腰は弱くなっているものの、病気を患うことなく生活していた。しかし、ここにきてさすがに杖に頼りながら移動するようになった。
愛子は、亜季が来るのを待ちかねたように話し始めた。
「昨日、仏壇の掃除をしていたら、引き出しにこんなものがあったのよ」
愛子は、そう言いながら仏壇の引き出しから封筒を取り出し、亜季に手渡した。
亜季は、渡された封筒の表の字を見て思わず息をのんだ。墨汁で「遺言書」と書かれていた。裏を返すと「平成31年2月28日 寺田信太郎」とあった。
「これはお義父(とう)さんの遺言書…」
「ちょっと前に『遺言書を書いておいたからね』と聞いていたんだけどね。どこかの家みたいに骨肉の争いなんてことにならずに済みそうね。お父さんは争いごとが嫌いだったから」
愛子の顔が心持ち明るくなった。
「早速開けてみましょうよ」
「お義母さん、だめですよ」
亜季は、封を切ろうとした愛子の手を止めた。
解説:「亜季は、封を切ろうとした愛子の手を止めた」
■実務論点:遺言書の検認
遺言書の検認は、遺言の方式に関する一切の事実を調査して遺言書の状態を確定し、その現状を明確にするものです。後日の紛争に備えて、偽造・変造を防止し、遺言書の原状を保全する手続です。
遺言書の検認手続は、公正証書遺言以外の全ての遺言書に要求されています(なお、遺言書保管所に保管されている遺言書については、検認は不要です。)が、遺言書の検認を受けたかどうかは、遺言の効力とは関係がありません。検認を受けたからといって遺言の有効性が確認されるわけではありません。
遺言書の保管者(保管者がいないときは遺言書を発見した相続人)は、相続開始を知った後に遅滞なく、相続開始地を管轄する家庭裁判所に遺言書検認の申立てをしなければいけません(民1004条1項)。
実務では、検認期日に相続人等の立会いを求めており、家庭裁判所は、検認期日を指定して申立人及び相続人に通知します(家事規則115条一項)。
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