借金大国ニッポン。新聞やテレビをはじめ、大手メディアはこぞって深刻な財政赤字を指摘しています。では具体的に「日本が今やるべきこと」って、何でしょうか? 書籍『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』(KKベストセラーズ)にて、評論家の中野剛志氏が指摘しているのは…。

政府はデフレ脱却のために何をすべきか

政府は、デフレを阻止し、マイルドなインフレを目指すべきですが、インフレも行き過ぎるとよくない。インフレが行き過ぎるようならば、政府は、インフレを阻止する政策を打ち出さなければなりません。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

要するに政府は、デフレにならないよう、かといって、インフレになり過ぎないよう、経済政策を操ってうまく舵取りをするのです。では、インフレ対策とデフレ対策とは、それぞれ具体的にどのようなものなのでしょうか。まずはインフレ対策から見ていきましょう。

 

①インフレ対策

 

インフレとは「需要過剰/供給不足」の状態です。ですから、インフレを止めるためには、需要を減らし、供給を増やす必要があります。では、需要を減らすには、政府は何をしたらよいでしょうか。

 

まず、政府自身が「需要」すなわち「消費」と「投資」を減らすことです。公務員など公共部門で働く人の数も減らしたほうがよい。要するに「小さな政府」にするということです。

 

また、政府は、民間の消費や投資を減らすこともできます。民間の支出に対して課税をすればよいのです。例えば、消費税を増税すれば、人々は消費を減らさざるを得ないでしょう。

 

こうして、政府が支出を削減し、増税をすれば、財政は健全化します。財政健全化とは、需要を抑制する政策なのです。

 

また、中央銀行(日本銀行)が金利を引き上げれば、企業は銀行から融資を受けにくくなり、投資を控えざるを得なくなります。消費者も、ローンを組みにくくなる。金融引き締め政策は、需要を抑制するということです。

 

インフレは、供給不足の状態ですから、供給力を増やすという政策もまた、インフレ対策となります。つまり、企業の生産性を向上させ、競争力を強化するのです。そのために有効な政策は、市場における企業の競争を活発にすることです。

 

具体的には、規制緩和や自由化によって、より多くの企業が自由に競争に参加できるようにすることが有効です。また、国の事業は民営化し、市場での競争にさらすと、より効率化し、生産性が向上するので、供給の増加が期待できます。

 

※経済学者は、規制緩和が企業の自由な競争を促進するものと考えています。一般的にも、そう思われているでしょう。しかし、実際には、自由競争を促進しようとすると、かえって、より多くの規制が必要になる場合が多い。つまり、規制の緩和ではなく、規制の強化や増加が、競争を促進するのです。これは重要な論点ですが、とりあえず本記事では議論を簡潔にするため、いったん「規制緩和=競争促進」として理解してください。

 

この規制緩和や自由化は、一国内だけではなく、グローバルに行えば、競争はさらに激化し、企業の競争力は強化され、生産性のいっそうの向上が期待できます。国境の壁を低くし、ヒト・モノ・カネの国際的な移動をより自由にする、いわゆるグローバル化は、供給力を強化するインフレ対策なのです。

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目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】

目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】

中野 剛志

KKベストセラーズ

読まれると経済学者・官僚が困る本ナンバー1 経済常識が180度変わる衝撃! 第1部 経済の基礎知識をマスターしよう 1.日本経済が成長しなくなった理由 2.デフレの中心で、インフレ対策を叫ぶ 3.経済政策をビジネ…

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