デフレ対策「保護主義をタブー視すべきではない」
②デフレ対策
デフレは「需要不足/供給過剰」の状態であり、インフレとは反対の現象です。ということは、デフレ対策は、インフレ対策を反対にしたものになるはずです。つまり、需要を拡大し、供給を抑制することが、デフレ対策です。具体的に見ていきましょう。
まず、政府は、みずから需要を増やさなければなりません。例えば、社会保障費や公共投資を拡大するなどして、財政支出を拡大するのです。公務員など、公共部門で働く人の数を増やすという手もあります。要するに「大きな政府」にするということです。
また、政府が、民間の消費や投資の増大を促進する必要もあります。そのためには、減税が効果的です。例えば、消費税は減税し、企業に対しても投資減税を行うのです。政府が財政支出を増やし、税収を減らすということは、財政赤字を拡大するということです。財政健全化が需要を抑制するインフレ対策なのであれば、その反対に、財政赤字の拡大は需要を拡大するデフレ対策だということです。また、中央銀行は、金融緩和を行い、個人や企業が融資を受けやすくすることが肝要でしょう。
こうした拡張的な財政金融政策が、需要を拡大するデフレ対策です。
デフレは供給過剰の状態ですから、供給を抑制することも、デフレ対策として効果的です。デフレの時に企業の生産性が向上すると、供給過剰がさらにひどくなってしまいます。ですから、デフレの時には、企業の生産性は向上させないほうがよい。したがって、企業間の競争は、むしろ抑制気味にすべきです。
具体的には、規制緩和や自由化はしないほうがよい。むしろ規制は強化し、事業は保護して、多くの企業が市場に参入できないようにして、競争を抑えるべきです。企業はお互いに競争するよりもむしろ、協調したほうがよいでしょう。
民営化も、それが競争を激化させるのであるならば、しないほうがよいでしょう。
もちろん、どんな事業でも、すべて国営化すべきだというわけではありません。しかし、なくなってしまうと国民が困るような公益的な産業や、あるいは倒産すると大量の失業者が出てしまったり、倒産の連鎖を起こしたりしてしまうような大規模かつ重要な産業であるならば、一時的に国営化することも必要になるでしょう。
デフレの時は競争を抑制すべきなのですから、当然のことながら、ヒト・モノ・カネの国際的な移動を自由にするグローバル化は、制限したほうがよいということになります。国境の壁で国内市場を保護する「保護主義」は、実は、供給過剰を抑制するデフレ対策になるのです。
誤解を避けるために補足すると、保護主義についても、「鎖国しろ」とか「全産業を保護しろ」とか言っているわけではありません。例えば、国際競争力のある産業まで保護する必要はありません。ここで強調したいのは、保護主義をタブー視すべきではないということです。デフレの時や、失業者が大量に出ている時などには、保護主義は正当化し得るのです。
さて、①のようなインフレ対策が実施された例が、過去にあります。それは、1970年代から80年代にかけての先進国です。