遺産相続は退職金に並ぶ人生の二大収入であり、大切な老後資金です。うっかりしていると、せっかくの資産が目減りしたり、税優遇のあるお得な特例を使い損ねたりすることがあるため、注意が必要です。相続に詳しい税理士が、相続の基礎知識から具体的なノウハウまで、明快に解説します。※本記事は、WTパートナーズ株式会社代表取締役、WT税理士法人代表社員の板倉京氏の著書『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)を一部抜粋・再編集したものです。

「空き家特例」が使えれば、儲けから3000万円が控除

 相続から3年以内なので、 すでに相続した人は早めに決断を

昭和56年5月31日以前に建てられた家なら、「空き家特例」が使える可能性。

儲けから3000万円が控除されるので最大600万円おトク!

ちょっとした勘違いで、特例を受けられないこともあるので準備が必要。      

 

自宅を売った時に儲けから3000万円控除してくれる、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」というものがありますが、相続で引き継いだ親の自宅を売った時にも同じく3000万円の控除が受けられる制度(空き家特例)があります。この制度を使うと税金を最大600万円安くすることができます。

 

この制度が使えるのは、令和5年12月31日までに売却している場合です。いつか売ろうと思っている家ならば、この制度が利用できるうちに売却することをおすすめします。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

●本来なら不動産を売った儲けには20%もの税金がかかる

 

おさらいになりますが、不動産を売って儲けが出た時には、所得税と住民税がかかります。儲けが出ていない時には税金はかかりません。ですから、儲けの出ない物件であれば、この制度に縛られる必要はありません。

 

不動産を売った時の儲けとは、ざっくりいえば買った金額と売った金額の差額です。3000万円の儲けが出たら、不動産を売った時の税率は所得税と住民税をあわせて20%なので、本来、3000万円×20%=600万円の税金を払うことになります。しかし、「空き家特例」を使えれば儲けから3000万円控除できますので、儲けはゼロ、税金もゼロになります。

 

空き家特例は、昭和56年5月31日以前に建てられた家だけに使える制度です。昔買った家は、貨幣価値の違いもあり、安く買っているケースも多く、儲けが出ることは珍しくありません。また、古すぎていくらで買ったかがわからないというケースも多々あります。

 

そのような時には、売った金額の5%で買ったこととする、という決まりがあります。5000万円で売れた物件であれば、5000万円×5%=250万円で買ったとみなすのです。

 

この場合の儲けは、5000万円−250万円=4750万円。税金は4750万円×20%=950万円です。とても高い税金になりますので、空き家特例が使えると税金の圧縮効果も高いです。

 

 空き家特例を受けられる家の条件 

 

①相続等で取得した昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。

②区分所有登記されている建物でないこと。

③相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。

④相続の時から譲渡の時まで事業用、貸付用、居住用に供されていないこと。

⑤売却代金が1億円以下であること。

 

●こんな場合は「空き家特例」が受けられないので要注意

 

この特例は、空き家(亡くなった人の自宅)を相続した相続人が、家を取り壊した後(もしくは耐震リフォームをした後)にその敷地または家屋を売った場合、儲けから3000万円が控除されます。昭和56年以前の物件に限っているのは、新耐震基準が設けられたのが昭和56年だったため、それ以前の家は耐震基準を満たさず危険だからです。危険な家をそのまま売らず、取り壊したり、耐震リフォームをして売るなら、税金を安くしてあげるよ、ということなのです。

 

とはいえ、費用をかけて耐震リフォームしても、古い家は見合った金額で売れません。ですから実際は家屋を撤去して敷地のみを売却するケースがほとんどです。

 

冒頭にも書いた通り、この特例を受けるためには令和5年(2023年)12月31日までに売却する必要があります(改正等により期限が延長される可能性もあります)。また相続の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しなければなりません。すでに相続を終えて親の家を引き継いでいる方は、急いだほうがよいでしょう。

 

さらに、空き家特例を受けるためには、クリアしなければならない条件があります。

 

①空き家を相続する際は、家屋とその敷地をセットで取得しなければいけない

②売り主が家屋の取り壊しをして買主に引き渡すこと

 

①は、この特例は「家」を持っている人が受けられる特例なので、「土地」だけを相続した人は使えないということです(自分の自宅売却の時も同様です)。逆に家だけ相続した人なら使うことはできますが、古い家屋にはもともと価値がほとんどないので売っても儲けが出ず、特例を利用しても効果は期待できません。ですから、相続するなら土地と家をセットで取得しておかないと意味がないのです。

 

②にも気を付けてください。この特例を利用するなら、買主が取り壊すような売買契約を締結してはいけません。空き家特例を使うためには売り主が取り壊し費用を負担して引き渡し前に更地にすることが必要です。解体費用の請求書、領収書や取り壊し前と取り壊した後の自宅の写真、売買のチラシに「古家解体後引き渡し」と明記してもらうなど、売り主が取り壊したことを証明できるようにしておくことも大切です。

 

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板倉 京

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