鎖国中の対外関係…「キリスト教を広めない」4つの国
1641年には平戸(ひらど)のオランダ商館を長崎の出島(でじま)に移し、出島だけで貿易をさせることにしました。出島というのは人工島です。こうして、いわゆる鎖国の状態が完成しました。3代将軍家光の時代です。
ただ、はじめにも書いたように、鎖国と言っても外国との付き合いはあったのです。鎖国中に付き合いをしていたのは、オランダ・中国・琉球王国・朝鮮・アイヌ民族です。
ヨーロッパの国で、貿易を許可されたのはオランダだけでした。スペインやポルトガルは追い出されましたが、この違いはなぜ起こったのでしょうか。島原・天草一揆で協力したから、というのも正しいのですが、幕府にとって一番重要なのは「キリスト教を広めるのかどうか」ということです。
オランダはプロテスタントで、カトリックのように積極的に布教する国ではありませんでした。そこでオランダはキリスト教を広めないと幕府に約束。キリスト教を広めるより、「貿易を独占することが重要だ」と考えたのでしょう。
そうして、オランダは出島で貿易を続けることが許されました。また、幕府は、毎年「オランダ風説書(ふうせつがき)」というものをオランダに提出させました。これによって、世界情勢をつかんでいたのです。だから、フランスで革命が起こったことや、ペリーが日本へやって来るらしい、ということまでいろいろなことを知っていました。
中国では、17世紀半ばに明(みん)が滅び、中国東北部の清(しん)が中国を支配しました。江戸時代は長崎で貿易が行われ、生糸(きいと)や絹織物(きぬおりもの)が輸入され、銀や銅が輸出されました。
じつは当時の日本は、世界でも有数の銀産出国でした。世界文化遺産に登録されている石見銀山(いわみぎんざん〔島根県〕)がその代表例です。戦国時代は、毛利元就(もうりもとなり)が支配していた石見銀山を、江戸幕府は天領(てんりょう〔幕府が直接治める土地〕)にしました。ところが、輸入が増加するにともなって銀の輸出量が増え、国内の銀が不足するようになります。
他にも、琉球、朝鮮、アイヌとの交流がありました。17世紀はじめ、琉球王国は薩摩の島津氏に征服され、薩摩藩の支配下に入っています。
李氏朝鮮(りしちょうせん)は対馬藩(つしまはん)の宗氏(そうし)を仲立ちにして、交流を深めました。朝鮮からは、はじめは文禄・慶長の役(ぶんろく・けいちょうのえき)のときの捕虜を返してもらうために、途中からは新しく将軍が決まったときのお祝いとして、朝鮮通信使(ちょうせんつうしんし)が送られました。
幕府はこの朝鮮通信使を厚くもてなしたそうです。いったいなぜでしょう? これを見た民衆は、「きっと将軍様はすごい!」と思ったことでしょう。だって、わざわざ隣の国からお祝いが来るのです。参勤交代(さんきんこうたい)にしても、大名がわざわざ江戸まで行きます。つまり、これらを民衆に見せることによって、幕府の権威を高めようとしたのです。それが支配にも役立つと考えたのでしょう。
何やらジャイアン理論に似ていますね。他の国を使って、自分の国の支配を有利に進める。古今東西、そういうやり方はあるのです。
次はアイヌ民族の話です。松前藩(まつまえはん)は、徳川家康からアイヌとの交易独占権を認められていました。アイヌは蝦夷(えぞ〔今の北海道〕)からロシアにまたがる先住民族で、縄文時代に近い生活を送っていました。
松前藩はアイヌと交易を行っていましたが、文字を持たず計算が苦手なアイヌをだまします。それに怒ったシャクシャインが戦いを仕掛けますが、失敗してアイヌは松前藩に支配されるようになりました。
このように、鎖国と言っても日本は4つの窓口で外国と付き合ってきました。最後にこの4つをあらためてまとめましょう。
①出島…オランダと貿易。唐人屋敷(とうじんやしき)がつくられ、中国の商人とも貿易。
②琉球…薩摩藩が支配。
③朝鮮…対馬藩を仲立ちに国交あり。朝鮮の釜山(ぷさん)で貿易。将軍の代替わりに朝鮮通信使が来る。
④アイヌ…松前藩が交易。アイヌのシャクシャインが反乱を起こすも、失敗。
松本 亘正
中学受験専門塾ジーニアス運営会社代表
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