相続ではお金を超えて「人間関係」の問題が表出する
遺産分割や遺留分侵害額請求等のご相談で、依頼者様と利害が対立する相手方が存在しているような場合、当然、私は依頼者様の利益を重視して各種のご提案をするようにしています。しかし、この場合の利益には、経済的なものだけではなく、人間関係の面も含まれます。依頼者様の主張によって、相続が円満に解決することもあれば、大きな争いに発展してしまうようなリスクがあることも説明しながらご提案をするよう、心がけています。
遺産分割を巡る裁判において、一方が自身の主張の正当性を証明するために不動産鑑定評価を依頼したとき、相手方もそれに対抗して不動産鑑定評価を依頼し、今度はお互いの不動産鑑定評価の内容に関する争いにまで発展し、結果として争いが大きくなり、解決までの期間が長期化することがあります。相続問題を解決するために利用されるべき不動産鑑定評価が、かえって問題を複雑化させてしまうことがあるのです。
そのような意味においては、相続問題のご相談を受ける不動産鑑定士も、ある種の責任を負うことになるため、案件の受注にあたっては慎重であるべきと考えています。
お父様、お母様がお亡くなりになった際に、相続人であるお子様方が遺産を巡って争うのではなく、互いに譲り合い、協力して相続問題に取り組むことこそ、最後の親孝行といえるのではないでしょうか。
森田 努/近藤 俊之/島根 猛/石川 宗徳/佐藤 良久/幾島 光子