日本では、2000年以降、タワーマンションが乱立する状態になっている。空き家が急増する中、これ以上、大量に住宅を供給する必要はあるのか?またマンションには欠かせない大規模修繕も、タワマンは多額の費用がかかり、破綻の兆しを見せている。いま、タワマンは「限界」にきていると、住宅ジャーナリストは指摘する。本連載は榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)より一部を抜粋、編集した原稿です。

タワマン大規模修繕の費用が足りない、どうなる?

2037年、いくつかのタワーマンションが廃墟化する

 

国土交通省は2011年4月に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」というものを発表した。

 

これによると20階以上のタワマンにおける修繕積立金の目安は月額にして平米あたり平均206円とされている。

 

先に上げた大規模修繕工事の「模範例」とされた約650戸のタワーマンションの場合、修繕積立金の平米単価は93円だった。206円の半分以下である。それでも何とか大規模修繕工事をやり終えた。しかし、積立金はその時点で一旦底をついた。

 

次回は2034年と予定されているが、現状のままでは7億円足りないと予測されている。しかし、値上げの動きはまだ出ていないという。どうするのであろう。

 

すでにベランダやサッシュの雨漏りが年間数件ずつの割合で発生している。シーリング材の劣化が始まっている可能性がある。今は個別に対応しているが、2034年には予定通り2回目の大規模修繕工事を行ったほうがよさそうだ。しかし、そのためには修繕積立金の大幅な値上げを行う必要がある。

 

以下は、一般論として考える。

 

タワーマンションでシーリング材の劣化による雨漏りが始まった場合、それは宿命と捉えるべきだろう。特に潮風や塩分を含んだ雨が吹き付ける湾岸エリアのタワーマンションの場合、シーリング材の劣化は内陸部よりも早く進む可能性も考えられる。

 

その前提に立てば、タワマンにおける約15年サイクルの大規模修繕工事による外壁の

補修は必須事項となる。

 

しかし、その費用は人件費の高騰などもあって今後ますます高騰することが予測できる。したがって2011年時点での国交省ガイドラインの平米平均単価206円では、すでに不足しているのではないかとさえ思える。

 

2022年前後に、多くのタワーマンションは1回目の大規模修繕工事を行うだろう。その15年後の2037年には容赦なく2回目を行う時期がくる。その時に、すべてのタワマンが外壁補修を伴う大規模修繕工事ができるだろうか。そこは全く楽観できない。

 

仮に費用面などで外壁補修をできないタワーマンションが出てきたとすれば、どうなるのか。当然、雨漏りなどが五月雨式に発生するだろう。個別の対応工事では限界がある。

 

雨漏りが放置されると、居住性が悪化するばかりではない。カビなどが発生しやすくなり、健康面でも危険性が高まる。

 

限界のタワーマンション

限界のタワーマンション

榊 淳司

集英社新書

日本では、2000年以降、タワーマンションが乱立する状態になっている。空き家が急増する中、これ以上、大量に住宅を供給する必要はあるのか?またマンションには欠かせない大規模修繕も、タワマンは多額の費用がかかり、破綻の…

新築マンションは 買ってはいけない!!

新築マンションは 買ってはいけない!!

榊 淳司

洋泉社

横浜で発覚したマンション傾斜問題は、氷山の一角にすぎない! 欠陥工事のみならず、人口減少時代を迎え、すでに住宅価格は下がり続けている。 いざ入居してみたら住民が外国人だらけだったり、隣人や管理組合でのトラブル、…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録