日本では、2000年以降、タワーマンションが乱立する状態になっている。空き家が急増する中、これ以上、大量に住宅を供給する必要はあるのか?またマンションには欠かせない大規模修繕も、タワマンは多額の費用がかかり、破綻の兆しを見せている。いま、タワマンは「限界」にきていると、住宅ジャーナリストは指摘する。本連載は榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)より一部を抜粋、編集した原稿です。

タワマンの大規模修繕の施工法が確立していない

つまり、タワーマンションという建造物は未だに施工法が確立されていない完成途上の状態にあるのだ。だから、大規模修繕のやり方も物件によって異なる。その結果、費用面でも負担が大きくなる。

 

榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)
榊淳司著『限界のタワーマンション』(集英社新書)

タワーマンションの大規模修繕工事における技術面での大きな課題はやはり、上層階の外壁修繕であろう。

 

通常のマンションなら足場を組んで対応できる。ただ、足場を組めるのはせいぜい17階あたりまで。タワーマンションの場合、高いものなら60階にもなる。では、どうするか。

 

やり方は何種類かある。

 

屋上のクレーンから作業用のゴンドラを吊るす方法。あるいは壁や柱に線路のようなガードレールを敷設し、そこに作業ゴンドラを取りつけて上下に移動する、というやり方もある。

 

ただ、いずれも強風下では作業ができない。風速が10メートルで作業が中止になる。地上では風速3メートルでも30階部分では風速10メートルになっている場合も多い。

 

だから時間もかかる。1層分の作業を終えるのに、1カ月かかる場合もある。

 

タワーマンションの施工は1カ月で2層というペースが普通だ。だからタワーマンションは施工するよりも外壁を修繕するほうが時間を要する。

 

また、タワーマンションの大規模修繕工事はそもそも実施例が少ない。つまり、施工ノウハウを持っている企業が少ないのだ。これもまた、費用がかさむ原因の1つだ。

 

今後、施工例が多くなってくるとノウハウを持った企業も増えるはずだ。しかし、建築現場の人手不足は日に日に深刻化しているのが現実。施工例が多くなったからといって、工事費が軽減されるとも考えにくい。

 

また2022年前後にタワマンの大規模修繕工事が集中した時、それを施工する業者の数が足りるのかも心配される。ノウハウを持った企業が限られて、そこに発注が集中することで価格が高騰することも考えられるのだ。

 

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限界のタワーマンション

限界のタワーマンション

榊 淳司

集英社新書

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