手術である以上「リスクゼロ」にはならないが…
Q 白内障手術で考えられるリスクは?
白内障の手術は、安全かつ短時間で受けられるのが大きな特徴です。
ただし、残念ながらリスクがゼロというわけではありません。繰り返しになりますが、リスクを限りなくゼロにするためにも、確かな技術と経験を持つ、信頼できる医師の施術を受けることが第一です。
それでも、可能性はかなり低いのですが、白内障手術によって起こり得るいくつかのリスクやトラブルには次のようなものがあります。
◆眼内レンズが入らない
「白内障が進行している」「水晶体と毛様体とをつなぐチン小帯が弱い」など、難易度が高いことが予想される手術では、1回の手術では眼内レンズを挿入できない場合があります。
この場合は、後日再手術を行い、眼球の壁に直接レンズを固定する(=強膜内固定術)必要があります。
◆眼内レンズのピントがずれる(術後屈折誤差)
術前に決めておいた眼内レンズのピントの位置がずれて、見え方に影響を及ぼすことがあります。誤差が大きい場合は、レンズの入れ替え手術を行わなければいけなくなります。再手術は眼への負担が大きいため、精密な手術前検査をすることが必要不可欠です。
◆感染(眼内炎)
手術中、あるいは術後に、まれに眼内に細菌が入り込んで増殖し、強い炎症が起こることがあります。手術の3日~1週間後に起こることが多いのですが、術後に適切に点眼薬を使っていれば、ほとんど発症することはありません。
「術後に何日も点眼薬を差すのが面倒」という声も聞かれますが、ここで点眼を怠ると思いがけない感染症につながりかねません。必ず毎日点眼するようにしてください。
手術の翌日以降に急激に視力が下がってきたり、目やにや充血、痛みをひどく感じたりするようなら、眼内炎の可能性があります。こうした違和感を覚えたら、できるだけ早く医師に相談してください。
◆高眼圧
手術による炎症や、眼の中を手術で触ったことによる一時的な眼の機能低下が原因で起こります。2~3日で正常な眼圧に戻ることがほとんどですが、手術の翌日以降に強い痛みを感じたら、速やかに医師の診察を受けてください。
◆網膜剥離
眼の内側にある網膜がはがれて、視力低下につながることもある病気です。発症率は1%以下と低いですが、術後に生じるリスクがある合併症です。
術後に視野の一部が暗くなってきたなどの症状に気づいたら、早めに医師に連絡してください。
◆駆逐性出血
発症率は0・03~0・06%(1万例に3~6件)と非常に低いのですが、眼の奥の動脈から大量に出血することがあります。
◆眼内レンズのずれ・脱落
白内障の術後、眼を強くぶつける外傷などをきっかけに眼内レンズが中心からずれたり、眼の奥の硝子体へと脱落したりすることがあります。
この場合は眼内レンズを入れ直す再手術をする必要があります。眼を強くぶつけてから、急に見えにくさを感じたときは速やかに受診しましょう。
◆嚢胞様黄斑浮腫
術後の早い時期に、まれに網膜のむくみや腫れが起こります。術後は目薬の点眼をしなければいけませんし、飲酒できないなど、生活上のさまざまな制限があります。その指示を守れなかった場合に発症することが多い病気です。糖尿病網膜症という持病がある人にも起こりやすくなります。
発症を防ぐために、術後は決められたことを守り、検診を指示どおりに受けることが大切です。
◆かすみ、見えにくさ(後発白内障)
術後数カ月~数年が経過してから、もともと水晶体が入っていた袋(水晶体嚢)が濁り、かすみや見えにくさなど白内障と同じような症状が現れることがあります。これを後発白内障といいます。
専用のレーザーを照射して水晶体嚢の濁りを飛ばす視力回復治療によって、手術直後の見え方に戻ります。
◆目の前で虫のようなものが動いている(飛蚊症)
飛蚊症は、目の前を糸くずや虫のようなものが動いているように見える症状です。
視線を動かすと追いかけてくるような動きをし、細かく揺れるため、その名のとおり「目の前を蚊が飛んでいる」ように感じます。普段は気づかなくても、白い壁や空などを見たときに意識することが多いようです。
原因の多くは、手術前からあった眼の中央にある硝子体の濁りによるものです。手術で水晶体の濁りが取れたことで、もともとあった硝子体の濁りを自覚しやすくなるために、この症状が起こります。ほとんどの場合は2、3カ月ほど経つと気にならなくなります。
ただ、まれに網膜剥離の前兆として症状が出ることがあります。飛蚊症の症状を感じたら、念のため医療機関を受診しましょう。
※次回は、術後についての質問と回答を掲載します。
渡邊 敬三
南大阪アイクリニック 院長
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