「よく見える!」と思えるときが最も良いタイミング
Q 手術を受けるベストタイミングはありますか?
「白内障手術を受けるタイミングはいつがいいのでしょうか?」と聞かれることがよくありますが、「基本的には、困っているときが手術を受けるタイミングです」と筆者はお答えするようにしています。
白内障は、がんやそのほかの深刻な病気のように、診断されたからといって必ずしも急いで手術しなければいけない病気ではありません。
白内障の進行度に問題がなく、かつ普段からまったく問題なく過ごせているようでしたら、まずは点眼治療をしたり、眼鏡を変えたりして様子を見ましょう。手術したらよく見えると言われても、普段困っていなければ、なかなか気が進まないものです。せっかく手術したのに「なんだか、手術前と変わらないな……」と思うよりも、「よく見える!」と思えるときが最も良いタイミングだと筆者は考えています。
例えば、あなたがなんとなく見えづらさを感じるようになり、「眼鏡の度数が合っていないのかな」と思って眼科を受診したとします。視力検査の結果に問題はありませんでしたが、医師からは「白内障です。手術をおすすめします」と言われました。とはいえ、普段は本も読めるし、運転もでき、遠くのものまでよく見えます。眼鏡なしで買い物に行くこともでき、生活にまったく支障はありません。
こういう場合は、手術を受けるのは少し早いかもしれません。老眼鏡をかけたり、眼鏡の度数を変えただけで、見えにくさが一気に改善される人もいます。
逆に、視力がちゃんとあって周りがはっきり見えていても、白内障のせいで日ごろ不快なまぶしさを感じているなら、手術を受けたほうが良いでしょう。術後はまぶしさが改善され、ずいぶん過ごしやすくなるはずです。
先ほど、「基本的には困っているときが手術のタイミング」と述べました。ただし、タイミングを計るうえで注意したいのは、本人が気づかない状況にあるときです。まず一つに、自覚症状を感じにくいけれども、実は手術をしなければいけないほど白内障が進行している場合があります。
このタイプの白内障は「核白内障」といいます。水晶体の中央にある核の部分から濁り始めていき、核がだんだん硬く膨らんでいきます。そのため、「眼鏡がなくても近くが見えやすくなり、その代わりに遠くが少しぼけてきた」という感覚はあるものの、眼鏡を替えれば問題なく過ごせてしまうので、進行を見逃しやすいのです。
核白内障はそのまま進行してしまうと、硬くなった水晶体を手術で処置するのに非常に時間がかかりますし、何よりも眼に負担がかかってしまいます。
核白内障で、かつ「硬くなってきているので早く手術したほうがいいでしょう」と言われたときは、たとえ現状に困っていなくても早めに手術することを推奨します。もう一つ注意しておきたいのは、その人の生活状況によって、自覚症状に気づきにくい場合があるということです。
例えば、白内障の進行度合いがまったく同じAさんとBさんがいたとします。Aさんは旅行が大好きで、車もよく運転し、週末にはテニスやゴルフに出かけるなど積極的な毎日を送っています。
一方、Bさんは定年後にめっきり家にいることが増え、今ではほとんど外に出ることはありません。2m先にある大画面のテレビを見て過ごし、ご飯を食べて寝る日々です。
Aさんは白内障が少し進行した段階で「なんだか見えにくくなったなあ」と気づき、週末のレジャーやスポーツに支障をきたすようになりました。しかし、Bさんはいまだ進行に気づいていません。
Bさんの困り具合は、現状ではそれほどでもありません。このまま同じ生活をずっと続けるならば、手術はまだ先でもいいでしょう。しかし、信頼する主治医に「もっとよく見えるようになりますよ」と手術を勧められたら、その言葉に耳を傾けてみるのもいいと思います。
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