弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

合意に至ったワケは?生活費指数で見ると…。

2 生活費指数の設定

婚姻費用の計算におけるBの生活費指数を55とすることについては、両者で意見が一致していました。(夫とともに)Bの扶養義務者であるAは出産直後で就業していないため、Aの稼働能力を反映させる(Bの生活費指数を55よりも下げる)ことはしませんでした。Aの生活費指数について、夫側は、成人としての100を用いるべきであると主張していました。計算は次のとおりになります。

 

 

※ 生活扶助基準及び教育費に関する厚生労働省の統計に基づくもの

 

1700万円×基礎収入割合34%=578万円(平成14年までの統計データを用いた)

夫の基礎収入578万円×(55+100)/(55+100+100+55)=289万円

妻側の必要額:婚姻費用年額289万円/12≒24万円

 

しかし実際にはAは夫と同居しているので、生活費指数を若干減らして90としました。計算は次のとおりになります。

 

夫の基礎収入578万円×(55+100)/(55+100+90+55)≒299万円

妻側の必要額:婚姻費用年額299万円/12≒25万円

 

3 他の事情の影響

実際には、夫側は「妻の潜在的稼働能力」も反映させるべきであるという主張もしていました。しかし、妻側が、「A・Bの扶養義務を婚姻費用に反映させる」ことについて承服したのと引き換えに、夫側も「妻の潜在的稼働能力」の主張は撤回することになり、合意に達しました。

 

 

三平 聡史

弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所 代表弁護士

 

 

 

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本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

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