「おかしいでしょう!」絶句した元妻が向かった先は…
当初、彼女は破綻したローンの返済義務が自分にあるということが信じられないようでした。「銀行にも確認させてください」というので、金融機関の担当者から正確な事情説明を受けるようすすめました。
「離婚したのに、請求されるのはおかしいでしょう」彼女はそう銀行の担当者を問い詰めました。銀行側の答えは「離婚は夫婦間の都合であり、債務とは一切関係ありません。連帯債務が離婚によって解消されることはありません」というものでした。
このケースではもちろん銀行側の言い分に理があります。銀行は返済の確実性を増すために夷川さんの元妻を連帯債務者に設定し、お互い合意の上で契約を結んだのです。夫婦の都合で外すことが認められたら、連帯債務は何の保証にもなりません。
最終的には夷川さんの元妻もそのことを理解し、納得しました。その上で、債務を最小限にするための任意売却に同意してもらえたため、私はすぐ銀行との交渉に入りました。
銀行側も競売申立の前に債務者が任意売却の意向を示したことを好感し、猶予期間を認めてくれました。銀行が競売申立を待ってくれたので、私としても余裕を持って販売活動に当たることができたのです。その結果、マンションは2500万円で売却でき、元夫婦が背負う残債は200万円あまりに軽減されました。
ただしそれでもなお、夷川さん本人は自己破産を申請することになりました。離婚後は生活を維持するため消費者金融などから借金を重ねており、返済の目処が立たなかったためです。一方、彼の元妻は月々1万円という少額ながら、返済を続けることを選びました。
「恥ずかしながら、離婚後は連帯債務者であることを完全に忘れていました。ローンを組んで家を購入することを安易に考えていた自分にも、今回の破綻について責任があると思っています」
決済終了後、彼女はそう語ってくれました。家を購入したほうが賃貸より安くすむのでお得、というのはものごとの表面しか見ない評価です。そのお得感の裏側には住宅ローンの支払いを継続しなければいけないというリスクが隠れていることを忘れてはなりません。