欧州の復興パッケージは静かに、ゆっくり前進中

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新型コロナによる深刻な景気悪化に後押しされる形で、20年7月に欧州で復興パッケージが合意されました。財政政策でまとまることが出来なかった欧州が、欧州復興基金の資金調達に共同債を発行するかもしれないなどの期待から話題となりましたが、耳にする機会が減った印象はあります。それでも、実施に向け前進していると見られます。

欧州復興基金:進捗の遅れが懸念されていたが緩やかにプロセスは1歩前進

欧州連合(EU)の交渉担当者は、2020年11月10日、域内の中期予算計画で合意に達しました。1兆8000億ユーロ(約224兆円)規模の予算と景気刺激策(復興パッケージ)の取りまとめに向け一歩前進したと見られます。


EU首脳らが今年7月に合意した復興パッケージは2つからなり、1つ目が21~27年のEU予算による多年次財政枠組み(MFF、1兆743億ユーロ)です。2つ目が話題となることが多い7500億ユーロの欧州復興基金です(図表1参照)。

どこに注目すべきか:欧州復興基金、復興パッケージ、法の支配

新型コロナによる深刻な景気悪化に後押しされる形で、20年7月に欧州で復興パッケージが合意されました。財政政策でまとまることが出来なかった欧州が、欧州復興基金の資金調達に共同債を発行するかもしれないなどの期待から話題となりましたが、耳にする機会が減った印象はあります。それでも、実施に向け前進していると見られます。


復興パッケージの合意は3ヵ月以上前の話であることから、まず簡単に復習します。復興パッケージのうち27年までの予算であるMFFは規模こそ約1兆ユーロですが、EUのルールで上限(EUの国民総所得〔GNI〕の1.23%)が定められており、支出は7年にわたりほぼ均等にGNIの1%超に抑えられています。


一方で欧州復興基金は規模こそ7500億ユーロ(GNIの約5.5%)ですが、MFFのような上限がなく、コロナの影響が残ると懸念される来年以降に集中して(前倒しで)使われる見込みで、効果への期待は高いものがあります(図表2参照)。また、欧州復興基金は欧州委員会がEU全体を代表して欧州共同の債券を発行し資金を調達することも関心の的です。


そこで欧州復興基金の内容を見ると、大半は「回復と頑強のファシリティ」です、構成はほぼ半分が補助金、残りがローンとなっています(図表1、6725億ユーロ)。ローンは貸付なので返済する必要がありますが、補助金は返済の必要がない資金と理解されています。そこで欧州復興基金の補助金の割当予定を額の大きい順に8ヵ国を並べました(図表2参照)。欧州復興基金からの恩恵を受ける国とも解釈できそうですが、イタリア、次いでスペインの割当額が大きくなっています。7月の合意後、ドイツ国債の利回りが概ね横ばいで推移したのに対し、イタリアやスペインの国債利回りが大幅に低下したことと整合的です。


また、絶対額でなく対GDP(国内総生産)比で見るとギリシャは補助金とローンの合計で320億ユーロ、対GDP比で約17%もの支援を受ける見込みです。格付け会社ムーディーズがギリシャを11月6日に格上げした際の理由に含めています。


欧州復興基金などからなる復興パッケージの進展は緩やかに前進している状況です。欧州復興基金は欧州議会と域内各国政府による最終承認、および域内各国議会での批准が必要となるからです。ネックとなりそうなのが「法の支配」を巡る問題です。EU条約で定められた内容の遵守を求めるもので、具体的には言論の自由や司法への介入が問題となっているハンガリーやポーランドなどが念頭にあると見られます。ハンガリーは法の支配の遵守に反対姿勢です。ただ、ドイツ、フランスが強く合意した欧州復興基金、プロセス遅れの懸念はあっても、実施の方向にゆっくり向かってはいるようです。

 

出所:欧州委員会(EC)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]欧州復興基金7500億ユーロの主な内訳 出所:欧州委員会(EC)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

出所:欧州委員会(EC)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]復興基金の補助金部分の主な国への配分 出所:欧州委員会(EC)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『欧州の復興パッケージは静かに、ゆっくり前進中』を参照)。

 

(2020年11月11日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

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