米雇用統計は堅調な回復を示唆するが、今後に課題も

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米国の10月雇用統計は回復の継続を示唆する内容でした。特に、非農業部門雇用者数は政府部門の雇用が減ったにもかかわらず民間の底上げで回復したことや、失業率の大幅な低下は、当局の財政、金融政策が雇用市場の下支えとなっていることが示唆されます。米雇用市場の当面の回復は想定されますが、一部課題も見られます。

米10月雇用統計:非農業部門雇用者数は市場予想を上回り、失業率は大幅に低下

米国労働省が2020年11月6日に発表した10月の雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比63.8万人増と市場予想(58.0万人増)を上回りました。前月は67.2万人増と速報値66.1万人増から上方修正されました。

 

失業率は6.9%と、市場予想(7.6%)、前月(7.9%)を下回りました。また、労働参加率は61.7%と前月(61.4%)を上回りました。ただ、27週以上にわたって職探しをしている長期失業者は115万人増えて356万人と、2014年以来の高水準となっています。

どこに注目すべきか:娯楽セクター、失業率低下、長期失業者

米国の10月雇用統計は回復の継続を示唆する内容でした。特に、非農業部門雇用者数は政府部門の雇用が減ったにもかかわらず民間の底上げで回復したことや(図表1参照)、失業率の大幅な低下は、当局の財政、金融政策が雇用市場の下支えとなっていることが示唆されます。米雇用市場の当面の回復は想定されますが、一部課題も見られます。

 

月次、期間:2020年9月(左)、2020年10月(右)、前月比、数字は10月分 出所:ブルームバーグ、米労働省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表]米主なセクターの雇用者数の変化 月次、期間:2020年9月(左)、2020年10月(右)、前月比、数字は10月分
出所:ブルームバーグ、米労働省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

まず、非農業部門雇用者数を確認します。今回の雇用データについて、米労働省のコメントでは雇用者数を押し上げたセクターとして、飲食からエンターテイメントなどを含めた娯楽(27.1万人)、雇用者数の先行指標となる傾向がある人材派遣(10.9万人)を含んだ専門・事業所向けのサービス、小売業、建設業をあげています。

 

建設業は、堅調な住宅市場に伴う動きと見られます。対面サービスに依存する割合が高い娯楽セクターの雇用再開は続いており、前月比の増加は他のセクターを上回っています。ただ9月が40万人程度の急回復であったのに比べ勢いが低下しています。足元、米国では新型コロナウイルスの感染が再拡大していることと関連しているか注目しています。

 

雇用の回復は失業率低下にも示されています。先の米労働省のコメントに戻ると、失業率については先月から1%も低下したことが最初に書かれています。失業率を算出する家計調査での就業者数の急増が失業率低下の主な背景です。また、今月の失業率の低下は性別、年代、人種別でみても減少(改善)が見られました。ただ人種間の失業率格差は残ります。最も格差の解決は月単位ではなく、より長期の課題であり、今後も改善が続くか見守る必要があります。

 

改めて繰り返しますが、今回の雇用統計は米国の雇用市場の回復を示唆しています。他にも失業率の質を示すU6失業率(経済的理由でのパートタイムを失業者にカウント)も低下するなど、改善しています。ただ、あえてデータに見え隠れする今後の課題を指摘するならば、長期失業者数(27週以上の失業者人数)は約356万人と、前月の約240万人から急上昇しています(図表2参照)。仮に失業がさらに長期化すれば労働市場から退出することとなり、結果として労働参加率が長期的に低迷する可能性も一応、想定する必要があります。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は機会あるごとに、スキルの損失など、長期失業の弊害を繰り返し指摘しています。しかし金融政策での解決が限られる課題だけに、この点で、今後政治の役割が重要となることも想定されます。

 

出所:ブルームバーグ、米労働省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米長期失業者数と労働参加率の推移 出所:ブルームバーグ、米労働省のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米雇用統計は堅調な回復を示唆するが、今後に課題も』を参照)。

 

(2020年11月9日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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