小規模病院があることのメリットとデメリット
こうした内容について面談で医師にお話しすると、意見が2つに分かれます。一つは、その通りで日本は病院数を減らすべきだという賛成意見です。それに対して、日本は国民皆保険制度なので、米国とは保険制度が違うので単純比較すべきではないという見方もあります。
保険制度の比較は話が複雑になり難しいので、私は単純にデータから読み取れることだけを説明するようにしています。
では、国民から見た場合はどうでしょうか。小規模であっても地域にたくさんの病院があることで、医療へのアクセスがしやすいというメリットがあります。これは米国をはじめ諸外国にはない大きな利点であることは確かです。
ただ、患者側にとって、病院数が多いことのデメリットもあります。よく知られているように、CTやMRIなどの検査装置は日本が世界で一番売れています。診療所も含めて医療機関が多いからです。たとえば、ある患者さんが病院でCT検査を受けたあと、念のために別の病院でセカンドオピニオンを聞く場合、また同じCT検査をすることになります。病院間で検査データを共有すればいいはずですが、それが難しいからです。患者は費用も手間もかかります。病院側からすれば、検査をすることで売り上げを増やそうという思惑もあるでしょう。そこで社会保障費のムダが生じます。
また、いくつもの病気を抱える高齢者が複数の医療機関にかかると、薬もそれぞれの医療機関で処方されますから、ここでも非効率な環境が生まれます。
病床機能でみた場合、ある患者さんが急性期のA病院にかかると、2週間後に回復期の病床に移ることになった時、回復期のあるB病院に転院しなければなりません。主治医から離れるのは患者や家族にとっては不安なことですし、転院手続きなども面倒です。
急性期、回復期、慢性期の病床機能を一つの建物に備えている大きな病院であれば、同じ病院内で病棟を移動すればすみます。患者本人や家族も安心ですし、手続きも簡素化されます。
それでは、日本の人口減少を踏まえて、適正な病院の数というのはどれくらいなのでしょうか。私は面談の際、医師に「日本の病院数はどれくらいが適正だと思いますか」と必ず質問します。大半の先生は現在の半分の4000程度が適正ではないかとおっしゃられます。実際、医療界でも4000くらいに半減すべきだという議論がなされています。
さまざまなデータを提示し、人口減少、国の財政問題、患者の奪い合いなどの観点から、病院の再編は必然であることをご説明すると、私がお会いする先生方はほぼ納得されます。
もはや医師の流動化(転職)は避けられないという結論が導きだされます。
武元 康明
半蔵門パートナーズ 社長
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