新型コロナウイルス感染拡大で医療現場はひっ迫し、医療崩壊ともいわれるなど、現場の医師や看護師、そして病院に注目が集まった。全国に緊急事態宣言が出された大混乱のさなか、ある医師から一本の電話がヘッドハンターにかかってきた。「どうやら資金ショートの噂が広がり、来年の春まで持たない。紹介できる病院はないか」と。もはや病院といえども安心の職場ではなくなった。ヘッドハンターが医師の転職の舞台裏を明かす。

医師の登録数増加も転職実績は前年割れ

前回、コロナ禍で医師の転職市場に大きな変化が生じていることを紹介しました。これまで人材紹介会社に登録していなかった先生方が、新たに登録して転職活動を始め出したのです。複数のクライアントからの情報によると、ある大手人材紹介会社では、医師の登録数が2020年は前年比約20%増加したとのことです。

 

ところが驚いたのは、登録数は増えている半面、斡旋成立の件数は逆に減少し、前年割れしているらしいのです。

 

医師の転職では採用の目線、基準が従来よりも厳しくなっているという。(※写真はイメージです/PIXTA)
医師の転職では採用の目線、基準が従来よりも厳しくなっているという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

その理由は2つあると考えられます。1つは、採用する病院側は選択肢が増えたことで、医師をふるいにかけていること。もう1つは、病院経営はどこもひっ迫している状況なので、採用基準が厳しくなり慎重に選んでいることです。従来は専門医であれば歓迎していましたが、いまは経歴や技術だけでなく、人物面までもしっかり見て採用するようになってきたということです。

 

同じ傾向が弊社のクライアントにもみられます。採用の目線、基準が従来よりも厳しくなっています。弊社のクライアントは経営的に安定していますが、それでもコロナ前と同じ状況ではありません。雇用維持のために職員の給与水準を全体的に引き下げるなどしてどうにかしのいでいるのが実状です。ですから経営が厳しい中でも、いまは優秀な先生を採用するチャンスで、コロナ後を見据えた先行投資になりますから、そのあたりのバランスを慎重にとっている状況といえます。

 

いずれにせよ、登録型もサーチ型も共通して、医師の採用基準は厳しくなってきているという現状があります。そして、この傾向は今後いっそう強まる見通しです。

 

2020年8月、宮城県の宮城県立がんセンター(名取市)と東北労災病院(仙台市)、仙台赤十字病院(仙台市)の3病院が統合するニュースが流れました。これは国が進める地域医療構想に基づく動きですが、私個人の印象としては、宮城県は地域医療構想の進捗が遅れていると感じていました。コロナ禍で経営がひっ迫する公的病院が待ったなしの状況に追い込まれているのではないかと思います。今後こうした病院再編が加速していくと見ています。

 

病院の再編が進むと、医師の求人は、診療科によって異なるものの、総論的には減っていくと予想されます。病院統合によって余剰人員が生まれ、それは医師も例外ではありません。

 

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30代からの「異業種」転職成功の極意

30代からの「異業種」転職成功の極意

武元 康明

河出書房新社

人の働く道は必ずしもひとつではない。同業種、同職種で一貫性を貫くか、あるいはそれまでの経験・知識をベースとしながらも持ち前の思考行動特性と資質を活かしながら異業種で新たなキャリアを形成するか。それとも2つを同時…

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