新型コロナウイルス感染拡大で医療現場はひっ迫し、医療崩壊ともいわれるなど、現場の医師や看護師、そして病院に注目が集まった。全国に緊急事態宣言が出された大混乱のさなか、ある医師から一本の電話がヘッドハンターにかかってきた。「どうやら資金ショートの噂が広がり、来年の春まで持たない。紹介できる病院はないか」と。もはや病院といえども安心の職場ではなくなった。ヘッドハンターが医師の転職の舞台裏を明かす。

「医療の輸出(国際交流)」で成長エンジンとなれるか

国が病院の再編を推進する狙いとして、病院を大規模化することで経営基盤を強化し、地域経済のエンジン、さらには医療産業を日本経済のエンジンにしようという目論見があり、そのモデルケースとして米国のピッツバーグ大学医療センター(UPMC)の取り組みについて前回ご紹介しました。

 

ピッツバーグはUPMCを中心とした医療産業を中核に、地域再生に成功した先進モデルとして世界的に脚光を浴びていますが、もう一つ「国際医療交流」の観点からも注目されます。患者はもとより医療関係者やビジネスパーソンが世界中からやって来るとともに、医療の輸出も行っているのです。たとえば、中東の発展途上国に対し、日本のODA(政府開発援助)のような形で医学生や研究者の教育を受注しています。各国で医療を目指す若者をUPMCで受け入れ、教育し、本国に帰すという教育ビジネスです。

 

医療の輸出(国際交流)で、日本経済を引っ張る成長エンジンにしようという狙いがあるという。(※写真はイメージです/PIXTA)
医療の輸出(国際交流)で、日本経済を引っ張る成長エンジンにしようという狙いがあるという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

さらに、発展途上国なので帰国しても、設備の整った病院がありません。そこで病院建設も請け負います。米国から大手建設会社などを派遣します。さらに国の医療制度を整備したり、米国メーカーの医療機器や電子カルテなどを導入する。この医療の輸出によって莫大な外貨が獲得できるのです。UPMCの医療収入の内訳を見ると、一般的な地域医療、先進医療、国際医療交流の3つが柱になっています。具体的な数字は公開されていませんが、国際医療交流の占める割合はかなり大きいと思われます。

 

日本でも、この国際医療交流に注目しています。第2次安倍政権の経済政策でかかげられた「アベノミクス」において「3本の矢」が示されましたが、その一つである「成長戦略」の中に医療分野があります。これが医療の輸出(国際交流)で、日本経済を引っ張る成長エンジンにしようという狙いです。

 

ここでいう医療の輸出とは、「メディカル・ツーリズム」(医療観光)とは異なります。インバウンドで外国人に日本の旅行とセットで、健康診断や病気の治療を受けてもらおうというものではありません。前述したUPMCのように、医療産業を文字通り輸出するのです。

 

日本では2014年に、岡山大学病院が岡山大学メディカルセンター(OUMC)構想を打ち出しました。日本版UPMCをつくろうということではないかと思いました。

 

実際、岡山市内には複数の病院があり、機能重複しています。これらを一つの組織に束ねて、連携する。そのうえで、UPMCを参考に、アジア地域を中心に地域医療、移植などの先端医療、国際医療交流、医療の輸出を行う。

 

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30代からの「異業種」転職成功の極意

30代からの「異業種」転職成功の極意

武元 康明

河出書房新社

人の働く道は必ずしもひとつではない。同業種、同職種で一貫性を貫くか、あるいはそれまでの経験・知識をベースとしながらも持ち前の思考行動特性と資質を活かしながら異業種で新たなキャリアを形成するか。それとも2つを同時…

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