新型コロナウイルス感染拡大で医療現場はひっ迫し、医療崩壊ともいわれるなど、現場の医師や看護師、そして病院に注目が集まった。全国に緊急事態宣言が出された大混乱のさなか、ある医師から一本の電話がヘッドハンターにかかってきた。「どうやら資金ショートの噂が広がり、来年の春まで持たない。紹介できる病院はないか」と。もはや病院といえども安心の職場ではなくなった。ヘッドハンターが医師の転職の舞台裏を明かす。

コロナの感染拡大で医師の転職に異変が

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大で医療界は大きく揺れ動きました。医師の転職事情にも変化が表れています。ここでは緊急事態宣言が発令された4月前後から、宣言が解除された6月までを第1期、6月~10月を第2期、11月以降を第3期と分けて見ていきたいと思います。

 

第1期は、スカウト対象の医師との面談数が大幅に減りました。面談に応じてくださる先生と、コロナが落ち着くまで延期してほしいという先生に二分されました。面談を受けていただけたのは、新型コロナウイルス患者を受け入れている急性期の病院に勤務する先生方です。外来があり感染対策をしている病院で、感染症の知識を持っている先生は比較的面談に応じていただけました。

 

緊急事態宣言中でも面談に応じる医師と延期する医師と二分されたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
緊急事態宣言中でも面談に応じる医師と延期する医師と二分されたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

一方、療養型の慢性期病院に勤務する先生は面談を回避する傾向が強かったです。いわゆる老人病院で外来がなく、そうした環境への配慮が強いのではないかと思います。

 

感染拡大が落ち着いた第2期は、面談数は復活傾向になりました。一部でZoomによるオンライン面談もありましたが、総じて問題はなく、慢性期病院の先生も面談に応じてくださるようになりました。

 

第3期は横ばいで、第2期とほぼ同じ状態です。ただ、年末から今年に入ってコロナの感染再拡大で環境は厳しくなってきています。慢性期の先生方は厳戒態勢に入っているので面談シャットアウト状態、急性期病院も難しくなってきています。特に私のスカウトする先生方は地方が中心なので、東京や他県からの人の出入りを強く警戒しています。

 

以上が2020年の大まかな傾向です。そういう中で、医師の先生方の意識にも変化がみられると感じています。コロナの先行きがまだ不透明なため、転職を考えているものの、動きにくいということが一つです。

 

私がスカウトする先生は地方の病院から、別の地方の病院へというケースが多いのが特徴です。たとえば、中国・四国地方から関西へ、東北から関東へなど。これは大学の医局人事が関係しており、同じ県内や近隣県の病院への転職は人間関係の問題で敬遠することが多いのです。したがって距離の離れた場所の病院と先生をマッチングさせることがほとんどです。

 

ところが、コロナ禍で他県への移動が難しくなり、特に遠方の場合は転職したくても行きにくいという心理が働きます。第1期はその傾向が強く、遠方は難しいので今回は見送りたいという話が多くありました。

 

ただ、なかには転職をしなければいけないという先生もいます。教授が退官して入れ替わるので、それを機に転職を迫られているなどのケースです。その場合は、遠方には行けないけど、近隣でもかまわないので転職したいという案件が目につきました。

 

このように以前は遠方同士でマッチングが成立していたものが、コロナ禍で成立が極めて減少したといえます。

 

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30代からの「異業種」転職成功の極意

30代からの「異業種」転職成功の極意

武元 康明

河出書房新社

人の働く道は必ずしもひとつではない。同業種、同職種で一貫性を貫くか、あるいはそれまでの経験・知識をベースとしながらも持ち前の思考行動特性と資質を活かしながら異業種で新たなキャリアを形成するか。それとも2つを同時…

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