発達障がいの代表的な症例
【知的発達症】
厳密に言えば、知的発達症は発達障がいの枠には入りませんが、知的発達症かどうかの基準となるIQ70前後(知的ボーダーライン)の発達障がいのお子さんもよく見かけます。発達障がいと知的発達症が併存することもあるということで、今回、発達障がいの枠に含めました。
文部科学省が平成14年に発表した「就学指導資料」によると、知的発達症とは、「発達期に起こり、知的機能の発達に明らかな遅れがあり、適応行動の困難性を伴う状態」であるとあります。
つまり、同年齢のお子さんの水準と比較して、認知、言語、思考、記憶などの機能や社会生活に必要なコミュニケーション能力、運動能力、自己統制能力などが身についておらず、それらの能力が関わる行動に困難を示す場合をいいます。
特に、言語の遅れの原因として挙げられることが多いです。先天的なものや周産期における障がいなどによるものと言われていますが、原因がわからない場合も多くあります。今まではIQが70未満を指していましたが、今度のDSM-5からはIQの値ではなく、生活での困難さの程度で軽重を判断することになりました。IQの値は参考として診断しています。
主に3歳児健診で言葉の遅れを指摘されるケースが多く、その場合はすぐに市町村の保健センターで行っている言葉の教室へ通うことが多いです。
3歳の頃に言葉の出が悪くても、保育園や幼稚園などの集団に入ってからさまざまな言葉を発し始めるお子さんも多くいます。そのようなお子さんのケースは、表出性言語遅滞と言われているもので、言葉の理解はあっても表出できない(喋れない)というのが原因です。
高機能自閉スペクトラム症のお子さんの中には表出性言語遅滞のように、初めに言葉の遅れがあっても後で追いつくお子さんも大勢います。また、新生児仮死後の脳性麻痺によって重度な知的発達症になり、てんかんなどとともに併存するケースもあります。
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知的発達に全体的な遅れはないけど、難しいことがある
【限局性学習症】
今まで学習障がい(LD:Learning Disorder)と呼ばれていたものを、DSM-5では、限局性学習症と呼ぶようになりました。名称は変わりましたが中身自体の考え方は変わりありません
基本的には、知的発達に全体的な遅れはないのに、読み、書き、計算、聞く、話す、推論するといった能力を習得したり、その能力を使って行動したりすることが困難な状態を示します。漢字やカタカナが読めるけど書けない書字障がいや、書けても読めない読字障がい、計算ができない計算障がいといった症状を総称しており、複合的な症状が合わさって出る場合もあります。
ちなみに読み書きが困難なことを、以前はディスレクシア(Dyslexia)と呼んでいまし たが、DSM-5からはこの言葉は使用しなくなりました。
日本には今まで標準化された学力検査がなく、医学的に診断することが難しくなっていましたが、スクリーニングとしては、2006年から「小学生の読み書きスクリーニング 検査(STRAW)」(インテルナ出版)が発達性読み書き障害(発達性ジスレキシア)検出のために用いられています。
2017年からは、中学生・高校生に対しても評価可能な「改訂版 標準読み書きスクリーニング検査(STRAW-R)」(インテルナ出版)が用いられています。
鈴木 直光
筑波こどものこころクリニック院長・小児科医
小児神経学会認定医博士(医学)
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