配偶者との離婚や別居においてトラブルはつきものです。知識を身につけ、もしもの時に備えましょう。今回は、実例を基に別居中の婚姻費用(生活費)にまつわるトラブルについて見ていきましょう。

妻が働いていて、収入がある場合…

しかし、妻が働いていて収入もあるような場合においては、夫が自分の賃貸住宅の家賃の支払いと、妻の住む家の住宅ローンの支払いの二重払いの状態を長く余儀なくされることは、夫にとっては大変酷ですし、他方で妻が収入がありながら住居費を全く払わないで住むことを認めるということは、公平を欠くともいえます。

 

そこで、妻が無職ではなく働いていて収入があるような場合には、妻が全く住居費を払っていない、ということを婚姻費用の算定にあたって考慮すべきとするケースが多いです。

 

この場合、妻の収入に対応する平均的な住居関係費を、標準的婚姻費用相当額から差し引くという考え方があります。

 

具体的には、家計調査年表等から、その人の属性や年収に対応する平均的な住居費というものを割り出し、その金額を標準的な婚姻費用相当額から差し引くというものです(大阪高等裁判所平成21年11月26日決定等)。

 

たとえば、双方の年収から算出される標準的な婚姻費用相当額が6万円となる場合に、妻の年収から割り出される平均的な住居関係費が3万円である場合は、夫が妻に支払うべき婚姻費用は、6万円から3万円を引いた月額3万円ということになります。

 

他にも色々な考え方が裁判例において提唱されていますが、いずれにしても、

 

「住宅ローンとして支払っている金額を全て差し引ける」

 

という考え方は認められる可能性は低いです。この点については、離婚相談をしていても一般的に誤解が多いように感じられます。

 

特に、住宅ローンを払っている夫側は、このような裁判実務の考え方に不満を持つことが多く、夫、妻どちらの側についても、弁護士として折衝に苦労することが多々あります。

 

以上を踏まえ、ただひとついえることは、自分が住宅ローンを払っている家から出て行くことは、相当の経済的リスクがあるということですので、別居する場合には相当の覚悟を持っておくべきでしょう。

 

 

※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。

 

 

北村 亮典

こすぎ法律事務所 弁護士

 

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