いつの時代もなくならない相続トラブル。「生前しっかり話し合ったから大丈夫」…ではないのです。大切な人の死後、まさかの事態が起きてしまったら? 相続終活専門協会代表理事・江幡吉昭氏が解説します。今回は「相続放棄」について。 ※本連載は遺言相続.com掲載の記事を再編集したものです。
「子どもの代わりに私が」は通用する?実は…。
<ケース1>
妻と子ども(5歳)がいるAが死亡した。妻が子を代理して相続放棄の意思表示をした。
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相続放棄は意思表示なので、未成年の子どもの相続放棄については、民法において能力制限についての制約がかかってきます。親権者が子どもを代理して相続放棄の意思表示をするときは、ほかの民法上の規定と同じく、それが利益相反行為※にならないか検証が必要になります。
※利益相反行為・・・「当事者間で利益が相反する行為」のことで、民法では各々の利益を守るために、一方が他方を代理したり、一人が双方を代理したりすること(双方代理)を禁止しています(民法108条)。
<ケース1>の場合、親権者の妻が未成年の子どもを代理して、相続放棄の意思表示をすることで、もともと妻:子=0.5:0.5だった法定相続分が、妻:子=1:0となります。子どもが相続放棄(妻による代理)することで妻の取り分が増えていますので、まさしく利益相反行為にあたり、相続放棄の効力はなくなります。
このようなケースについての多くは「未成年に財産管理はできないから自分が管理しておこう」という親権者としての動機や内心の事情があることでしょう。ただ利益相反については形式的に判断するそうですので、お気をつけください。
次に<疑問2>相続人全員が相続放棄したらどうなるのか?についてです。
株式会社アレース・ファミリーオフィス 代表取締役
一般社団法人相続終活専門協会 理事
大学卒業後、住友生命保険に入社。その後、英スタンダードチャータード銀行にて最年少シニアマネージャーとして活躍。2009年、経営者層の税務・法務・ 財務管理・資産運用を行う「アレース・ファミリーオフィス」を設立。以降、4000件以上の相続案件を手がけた「相続のプロ」。数多くの相続争い(争族) を経験するなかで、争族を避けるノウハウを確立。そうした知見を幅広く認知してもらう目的で「一般社団法人相続終活専門協会」を設立し、代表理事に就任。
著書『プロが教える 相続でモメないための本』(アスコム刊)などがある。
遺言相続.com(https://egonsouzoku.com/)
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連載相続専門家・江幡吉昭の「相続争いはこうやって防ぎなさい」