※本記事は、弁護士の稲葉治久氏の著書『男はこうしてバカを見る 男女トラブルの法律学』(幻冬舎MC)の内容を一部抜粋・改編したものです。最新の情報・税制等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

内縁関係の「子どもの親権者」は、どちらか一方だけ

まず、婚姻の場合には、父親と母親がともに子どもの親権者となりますが、内縁の場合にはどちらか一方にしか親権がありません(図表)。そして、基本的には母親が親権者となります。子どもは母親の戸籍に入り、姓も母親のものを名乗ることになります。

 

[図表]内縁の場合の子どもとの関係

 

そのため、男性が親権を得たいのであれば、協議かもしくは裁判所の審判を通じて母親から親権を移してもらわなければなりません。

 

協議により親権を移してもらいたいのであれば、内縁を解消する前にアクションを起こす必要があるでしょう(内縁解消後に親権を移してもらえる可能性はほとんどありません)。例えば、「いずれこの子に実家を継いでもらいたいから、今のうちに名字も自分のほうに変えておきたい。だから、いったん親権を移してくれないか。監護に関してはそのまま君のほうで看てもらっていいし、養育費もきちんと支払うから」などと何らかの条件を設けて親権を確保しておく方法も考えられます。

 

また、親権を得られないとしても、父親として子どもとの面会交流を求めることはできます。この点に関しても、離婚の場合と全く変わりありません。

 

なお、内縁相手との間で親権が問題となる場合、その前提として認知が行われていることが必要になります。認知に関しては、それ自体が男女間の一つの典型的なトラブルの原因として問題になることが多いので次回以降で改めて取り上げます。

婚約の事実を明らかにするには、どんな証拠が必要か?

婚姻と内縁のほかに、男女が別れたり、一方が浮気をした場合に法的な責任が発生する可能性があるものとしては「婚約」もあげられます。

 

すなわち、理由もなく婚約を破棄したり(婚約の不当破棄)、婚約中にほかの異性と浮気すれば、慰謝料請求の対象になる場合があります。

 

婚約は、将来の結婚を男女が約束するだけで成立します。つまり「結婚してください!」「喜んで!」といった口頭のやりとりだけでも、婚約は認められます。

 

もっとも、不当破棄などの婚約を巡るトラブルが裁判で争われる場合には、単なる口約束だけでは、裁判所に「婚約があった」と認定してもらえません。全ての法的トラブルに関して言えることですが、争われている事実について裁判でその存在を認めてもらうためには、裏付けとなる客観的な証拠が必要になります。

 

婚約の事実を明らかにするためには、以下のような具体的な事実を証拠とともに示すとよいでしょう。

 

 ①婚約者双方の家族に対して結婚の挨拶をしている

 ②結納を交わしている

 ③友人に婚約者として紹介されている

 ④婚約指輪を受け取ってもらっている

 ⑤結婚式場を手配・予約している

 

これらのほかに、結婚の約束をした文書があれば、もちろん決定的な証拠となります。

 

実際、婚約破棄に関する男性からの相談は少なくないので、婚約をするときには、口約束だけでなく婚約誓約書もしっかりと作成しておくことをお勧めします。

 

 

稲葉セントラル法律事務所
稲葉 治久 弁護士

 

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稲葉 治久

幻冬舎

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