白内障は、60代で約80%、80代でほぼ100%と、だれもが罹患する病気です。しかし、甘く見て放置していると、その裏で深刻な病気が進行しているケースもあるため注意が必要です。本記事では、白内障の手術を検討している人に向け、医療機関の選択基準を解説します。※本連載は、渡邊敬三氏の著書『誤差ゼロを追求する 渡邊式・白内障治療』(幻冬舎MC)より抜粋・再編集したものです。

「期待通り」と感じられる屈折誤差は、±0.25D以内

白内障手術で生じた屈折誤差が±0.25D以内なら体感では差異がなく、「期待どおりの鮮明な視界を得ることができた」と感じられます。

 

±0.5Dの誤差であれば、それほど支障がないので「許容範囲」といえるでしょうが、±0.75を超えると視力がぼやけて感じるようになります。体感でも「期待したような見え方にならない」と自覚することになるでしょう。

 

このような白内障手術の屈折誤差に関する数値は、日本においてはまだ公表されている統計がありません。したがって、国内のほかの眼科医療機関と比べてこの数値が大きいか小さいか、多いか少ないかなどの評価を下すことはできませんが、海外では過去に、大規模な統計で研究結果が報告されたケースがあります。それは白内障手術と屈折矯正手術の学会誌『J Cataract Refract Surg』の2018年4月に発行された号に載っている「白内障手術後の屈折異常の危険因子」という報告書です。

 

標準的な白内障手術後の屈折結果を調べるため、ヨーロッパ12カ国から白内障手術を行っている眼科クリニック100件を選び、2014年1月1日から2015年12月31日までの2年間に報告された白内障手術のうち、経過観察のデータを利用できる28万2811症例(平均年齢74歳)について屈折誤差を調べました。

 

その結果、屈折誤差±0.5D以内が72.7%(20万5675症例)、±1.0D以内が93%(26万3015症例)であることが分かりました。

 

研究では±0.25D以内の症例数やパーセンテージは報告されていませんが、20名近くの報告者らは、

 

①推奨する屈折誤差の範囲を「±0.6D以内」から「±0.45D以内」に変更する

 

②医療機関ごとの屈折誤差に関する最低ラインを「少なくとも87%の患者を±1.0D以内に」から「少なくとも90%の患者を±1.0D以内に」に変更する

 

という二つのことを提案しています。つまり、白内障手術における屈折誤差は「±0.45D以内なら許容範囲、±1.0Dが守るべき最低ライン」ととらえていると考えられます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)
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誤差ゼロを追求する 渡邊式・白内障治療

誤差ゼロを追求する 渡邊式・白内障治療

渡邊 敬三

幻冬舎メディアコンサルティング

手軽に白内障手術を受けられる時代だからこそ正しい知識とクリニック選びで、術後の視力は劇的に変わる! 患者一人ひとりのQOL(生活の質)の向上こそが白内障治療の最大の目的である。 「最善の白内障治療法」を日々追…

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