「期待通り」と感じられる屈折誤差は、±0.25D以内
白内障手術で生じた屈折誤差が±0.25D以内なら体感では差異がなく、「期待どおりの鮮明な視界を得ることができた」と感じられます。
±0.5Dの誤差であれば、それほど支障がないので「許容範囲」といえるでしょうが、±0.75を超えると視力がぼやけて感じるようになります。体感でも「期待したような見え方にならない」と自覚することになるでしょう。
このような白内障手術の屈折誤差に関する数値は、日本においてはまだ公表されている統計がありません。したがって、国内のほかの眼科医療機関と比べてこの数値が大きいか小さいか、多いか少ないかなどの評価を下すことはできませんが、海外では過去に、大規模な統計で研究結果が報告されたケースがあります。それは白内障手術と屈折矯正手術の学会誌『J Cataract Refract Surg』の2018年4月に発行された号に載っている「白内障手術後の屈折異常の危険因子」という報告書です。
標準的な白内障手術後の屈折結果を調べるため、ヨーロッパ12カ国から白内障手術を行っている眼科クリニック100件を選び、2014年1月1日から2015年12月31日までの2年間に報告された白内障手術のうち、経過観察のデータを利用できる28万2811症例(平均年齢74歳)について屈折誤差を調べました。
その結果、屈折誤差±0.5D以内が72.7%(20万5675症例)、±1.0D以内が93%(26万3015症例)であることが分かりました。
研究では±0.25D以内の症例数やパーセンテージは報告されていませんが、20名近くの報告者らは、
①推奨する屈折誤差の範囲を「±0.6D以内」から「±0.45D以内」に変更する
②医療機関ごとの屈折誤差に関する最低ラインを「少なくとも87%の患者を±1.0D以内に」から「少なくとも90%の患者を±1.0D以内に」に変更する
という二つのことを提案しています。つまり、白内障手術における屈折誤差は「±0.45D以内なら許容範囲、±1.0Dが守るべき最低ライン」ととらえていると考えられます。