本記事は松本泰世氏の書籍『一生稼げる歯科医院開業読本』(幻冬舎MC)から一部を抜粋・再編集したものです。

「お客さまに来ていただいているという意識

今は患者さんが歯科医院を選ぶ時代です。依然として、歯科医が人に尊敬されるすばらしい仕事であることは事実ですが、それと同時に歯科医院はサービス業であり、患者さんは「お客さま」なのです。

 

患者さんに接するときは「治してあげている」ではなく、「お客さまに来ていただいている」という、商売人のような心持ちでいなければ、患者さんに選んでもらえなくなっているのです。

 

それを心得ず、「歯科医師(サービスを提供する側)が患者さんに与えるイメージ」をまったく気にしないのは言語道断です。自分がお客さんで、入ったレストランの店員の態度が最悪だったら、腹が立つでしょう。置き換えてみればすぐわかることなのに、自分たちのことは棚上げして、好感度を上げる努力をまったくしていない先生もいらっしゃいます。

 

患者さんと接するときにまったく笑顔がなく無愛想だったり、しゃべり方がボソボソとして暗い印象だったり、ぶっきらぼうだったりする先生もたくさんいらっしゃいます。先生自身にはそれほど問題がない場合でも、受付などのスタッフの感じが悪いケースもよくあります。そんなスタッフ教育が行き届いていないような医院に通いたいと思う、心の広い患者さんはほとんどいません。

 

腕さえよければ、多少愛想が悪くても繁盛する――というのは幻想なのです。世の中には、腕に問題がなく、歯科医もスタッフもにこやかで感じがいい歯科医院がいくらでもあるからです。

わずかな香りでも「気分が悪くなる…」

患者さんに好かれるためには、何をさておいても、身だしなみをきちんとすることです。朝のうちに鏡で頭のてっぺんからつま先まで一通りチェックし、日中もトイレに行くたびに、自分の身だしなみを確認したいところです。

 

女性の場合、厚化粧、香水はNGです。香りつきのボディークリームなども避けてください。敏感な患者さんだと、わずかな香りをただよわせただけでも、「気分が悪くなる」といわれてしまうことがあります。

 

男性女性に関係なく、派手な印象を与える髪型や髪の色、服装(たとえ白衣の下でも)や、アクセサリーは避けたほうが無難です。これはビジネスマナーなどでもよくいわれることですが、揺れるデザインのピアスなど、自然に人の視線を集めてしまうものは避けてください。プライベートは自由ですが、診療時間中は何もかもシンプルさと機能性を重視し、清潔感で勝負しましょう。

 

特に気にする先生の場合、日焼けしすぎないように注意しているという話も聞いたことがあります。どこへ行ったわけではなくても「週末ゴルフに行っていたふう」や「ハワイ帰り」のように見られれば、「この人、さぞや儲けているのだろうな」などと、反感を持たれる原因になりかねないからだそうです。

 

「ハワイ帰りかよ…」と患者さんから反感を持たれてしまう!? (画像はイメージです/PIXTA)
「ハワイ帰りかよ…」と患者さんから反感を持たれてしまう!?
(画像はイメージです/PIXTA)

口臭、体臭にも細心の注意を払う

加えて、口臭、体臭にも細心の注意を払うべきです。また、たばこのニオイには敏感な人も多いので、休憩時間に一服するのも注意したほうがよさそうです。なお、歯科医で口臭がきついというのは言語道断。スタッフともどもブレスケアには細心の注意を払いましょう。

 

翌日診療がある日の夜は、飲みすぎやにんにく料理などの食べすぎは厳禁です。以前お会いした歯科医の先生で、スタッフにも患者さんにも愛されるキャラの先生なのですが、朝まで飲み続けてしまい、自分の歯科医院の入り口の前で寝てしまったという話を、笑いながら話された先生がいらっしゃいました。

 

話としては面白いのですが、翌日の診療は大丈夫だったのかしら?と心配になったものです。患者さんは先生たちが思っているより敏感ですから、恐らく全身からただよう酒臭さや二日酔いのどんよりした雰囲気は、しっかり伝わってしまったでしょう。

 

気晴らしにパーッと飲みたいときは、もちろん飲んでもよいのです。しかし、翌日が休診日のタイミングを選んでください。自宅と歯科医院が近所にあると、通うのがラクですし、交通費もかからないというメリットがありますが、プライベートの姿を患者さんに目撃される確率は高くなります。ずっと居住まいを正して過ごすのも気づまりという理由から、あえて自宅と歯科医院の位置を少し離す(たとえば、自宅から電車で3駅先の街に開業するなど)こともよくあるので、開業場所選びの際に、検討してみてもいいでしょう。

好感度の高さはリピーターと新規顧客の集客に繋がる

患者さんから好かれる歯科医に多いのが、親しみのある「笑顔」と患者さんとの会話を弾ませる「会話力」を持っていることです。

 

「本当に歯科医に笑顔と会話力は必要なのだろうか」そんな疑問を持った方もいらっしゃるかもしれませんが、歯科医にとって笑顔はとても大切です。最初の挨拶、会話もなるべくにこやかに。一瞬笑って見せるだけでなく、「あの先生はいつも笑顔だなあ」という印象が残るくらい、笑顔を忘れないようにしましょう。単純ですが、こうするだけで患者さんからのイメージは劇的によくなり、「あの先生はいい人だ」ということになります(図表参照)。

 

また、最近の歯科医院ではインフォームド・コンセントの徹底が求められます。そのため、患者さんに対し、現在の患部の状態や治療内容を、できるだけわかりやすく説明しなければなりません。にもかかわらず、言葉がボソボソと不明瞭で聞き取りにくかったり、ぶっきらぼうな話し方をする先生は、どうしても敬遠されてしまいます。

 

多少の世間話などで場を和ませ、コミュニケーションを深めることも重要です。特に、お年寄りなどは話好きの人も多いですし、小さな子どもの患者さんには、緊張をほぐすために興味をひくような話を優しく投げかけてあげるなどすると、確実に親御さんの心証はよくなります。

 

いつでも愛想よく、誠実な態度で会話していれば、ぐんぐん好感度は上がります。もちろん、心にもないお世辞をいったり、調子よくしゃべりすぎたり、なれなれしすぎるのは完全に逆効果ですが、ほどよく会話を交わす分には、治療の回数を重ねるたびに患者さんと仲よくなれるはずです。そうなると、その患者さんは「また定期検診や虫歯のときは、ここに来よう」と、高い確率で思ってくれるものです。

 

それに、患者さんが「○○歯科は感じがいいよ」と友人・知人に話してくれれば、さらに患者さんを獲得するチャンスは広がります。この手の口コミは常に日常会話の中に登場し、想像以上の効果を発揮するので、侮ることはできません。

 

【図表】高感度の高い歯科医師のポイント
【図表】高感度の高い歯科医師のポイント

歯科医にとって会話力の欠如は大きな問題と心得る

しかし、中には口下手な方もいるはずです。筆者が知る方にも、人柄はとても誠実なのですが、寡黙で人と話すのが大の苦手という先生がいらっしゃいました。歯科医には、こんなにも対人スキルや会話力が求められるものだとは思っていなかったようです。案の定、この歯科医院は経営状況が芳しくありません。立地条件や建物の外観などに大きな問題はなかったため、やはり院長先生のコミュニケーション能力に問題があるように推測されました。

 

このように、会話力の欠如は歯科医にとってあまりにも大きすぎる欠点です。改善するためには、冗談抜きで「話し方教室」に行くなどの行動を起こすことが大切です。「ビジネスマナー研修」のようなものを受講して、印象のよい人になるためのルールを学ぶのもよいでしょう。

 

ですが、自覚はあっても、なかなかそこまで踏み出せる人がいないというのが実情です。清潔感や明るさ、会話力の高さは、歯科医だけでなくスタッフにも求められる資質です。スタッフの一挙手一投足は、患者さんによって観察されているものであり、落ち度があると簡単に患者さんは離れてしまいます。それなのに、スタッフ教育を軽視して、問題のあるスタッフを置いている歯科医院も少なからず見かけます。

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    本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『一生稼げる歯科医院開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    一生稼げる歯科医院開業読本

    一生稼げる歯科医院開業読本

    松本 泰世

    幻冬舎メディアコンサルティング

    歯科医師とほかの診療科の医師との大きな違いは、近い将来いずれは独立開業を迫られることになるという点です。開業準備は早ければ早い方が有利になります。しかし、具体的に何から手を付ければよいのかが分からずに開業準備を…

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