不動産の相続では、親族間の「共有名義」にしてしまったため後々トラブルに発展するケースが多発しています。あなたの実家もキケンかも? 3つの事例から見ていきましょう。 ※本記事は『あぶない!! 共有名義不動産』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。

実家を子が相続し「兄弟の共有名義」にする場合が多い

共有名義不動産となるケースで最も多いのは、相続による場合と夫婦が共同購入する場合の2つであり、このいずれについてもトラブルとなる可能性が非常に大きいといえます。本記事では、相続あるいは夫婦による共同購入の結果、不動産を共有することになった共有者がトラブルや大きな問題に巻き込まれた実例を見ていきましょう。

 

 

それらの具体的なエピソードを通して、不動産を安易に共有名義にすること、そして共有名義のまま放置しておくことの危険性を深く実感できるはずです。

 

◆家族や親族の〈住まい〉を相続してトラブルになったケース

 

相続で共有名義となった不動産に関するトラブル事例をみていきましょう。相続の場合、共有の対象となる不動産として最も一般的なのは被相続人が暮らしていた家や土地です。なかでも、亡くなった親の住んでいた実家を子どもたちが相続し、兄弟の共有名義で登記する例は非常に多くみられます。以下では、そのように家族や親族の住まいを相続して共有名義とした結果、トラブルや問題になった事例を順に紹介していきましょう。

 

【事例1】共有名義不動産を弟たちが勝手に売りに出した

 

共有していた不動産が、いつの間にか売りに出されていた……そんなショッキングなトラブルもあります。

 

Eさんは、9年前に2人の弟とともに母親が住んでいた一軒家を相続しました。兄弟はみな別に住まいを構えていたので、相続した家は空き家のままとなっていました。

 

ところがEさんは最近、弟たちが地元の不動産屋に依頼してその家を売りに出していることを知りました。売り出し価格の相談はもちろん、「売却する」という事前の連絡もありませんでした。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

「昔から弟たちはわがままだったが、勝手に売られるのは納得いかない!」とEさんは憤りを覚えました。

 

もともとEさんは、いずれ弟2人から持分を買い取り、家を自分の単独所有としたうえで娘夫婦に住ませたいとの意向を持っていました。Eさんは、今後自分がとるべき選択肢としては、次の4つがあると考えています。

 

① やむを得ず弟たち主導の売却に応じる。

② 断固、売却に応じない。

③ 適正価格にて弟2人の持分を買い受ける。

④ 自分の持分だけを売却する。

 

しかし、兄弟間の複雑な感情などが邪魔をして、話はまとまりそうにない状況です。Eさんは、「このようなトラブルが起こった場合、他の人たちはどのように解決しているのだろうか。できれば誰かに良いアドバイスをもらいたい」と思っています。

「居酒屋を営む兄が勝手に…」弟が驚いたワケは

【事例2】土地の持分と区分所有権を兄に売りたい

 

次に紹介するのは、相続した不動産の権利の中に、持分だけでなく区分所有権が含まれていた例です。1棟の建物の中に独立した複数の住居や店舗、事務所などがある場合、それぞれの独立した部分の所有権を区分所有権といいます。

 

 

Fさんは、兄とともに親から3階建てのビルを相続しました。それぞれの持分の割合や、あるいは相続した建物区分所有権は次のような形になっています。

 

●Fさん土地3分の1と建物2階・3階部分の区分所有権

●兄土地3分の2と建物1階部分の区分所有権

 

Fさんの兄は、現在、1階で居酒屋を営んでいます。1階部分については兄が区分所有権を持っているので、居酒屋を営業すること自体にはもちろん何の問題もありません。しかし、本来、Fさんが区分所有権を持つ2階と3階も、兄は勝手に利用していました。しかも、賃料は支払われていません。

 

そのため、Fさんは「このまま自分で使えないのなら持っていても仕方がない。いっそのことすべての権利を買い取ってもらいたい」と土地の持分と区分所有権の購入を兄に促していますが、話は一向に前に進みません。第三者に売ることも選択肢の1つとして検討したものの、Fさんは兄が親の面倒を長年見てきたことには感謝の気持ちを持っていたので、できれば2人の間で穏便に解決したいと望んでいます。

 

【事例3】共有者の弟が実家の売却に突然反対した

 

Gさんは母親の死により、大阪にある築30年の物件を弟とともに相続しました。遺産分割協議書の作成も済ませ、持分2分の1ずつで各自の登記も完了しています。この物件は誰も住まない空き家となったため、Gさんと弟の間では母の三回忌が済んだら売却することで話がまとまっていました。

 

ところがその後、弟はどういうわけか突然「売却には反対だ」と言い出し、Gさんの持分の買い取りも提案してきました。Gさんは「そこまで言うのなら」と持分を売ることを決めましたが、弟はいつまで経っても買い取る様子を見せません。

 

弟に不信感を抱き始めたGさんは当事者同士での解決は難しいと考え、調停、もしくは裁判を起こすことを検討しています。もっとも、裁判所の手続きを利用するとなると、費用や時間がかかることは避けられません。そのためGさんは「より負担の少ない方法はないだろうか」と別の解決策も探っているところです。

 

 

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    松原 昌洙

    幻冬舎メディアコンサルティング

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