「間違いなく自分の子ども」とわかった場合には…
DNA鑑定の結果、「間違いなく自分の子どもである」とわかった場合には、基本的には認知をするしかありません。拒んだとしても、女性の側は認知を求める訴えを起こすことができます。つまりは、裁判によって認知をせざるを得ない状況になるだけです。
いずれにせよ、ぐずぐずと認知を渋っていると、どんなトラブルが起こるかわかりません。もしかしたら、業を煮やした女性が職場に乗り込んできて「この人はひどい、子どもがいるのに認めようとしない」などと騒ぎ立てるかもしれません。また、不倫の場合には、「旦那さんが認知をしてくれないので、本当に困っている」などと奥さんに訴えられてしまうおそれもあります。
子どもが認知してもらえるかどうかは、女性にとっては非常に切実なこのうえなく大きな問題です。悩み苦しむあまり、そうした衝動的、感情的な行動に出られたとしてもいたしかたない面があるでしょう。
したがって、自分の子どもであることが間違いないのであれば、大事になる前に、きちんと認知して養育費の支払いを約束するなど誠意ある大人の対応をとるべきです。
それから、認知をすれば戸籍にその事実が記録されることになります。そのため、家族には遅かれ早かれ発覚する可能性があります。奥さんがいるような場合には、腹をくくって「実は……」と包み隠さず全てを説明することも必要になるかもしれません。
何としてでも認知をしたくない人はどうすればいいのか
もちろん、なかには「妻に知られたらどんな目にあうかわからない。絶対にそれだけは避けたい」などといった理由から、何としてでも認知をしたくないという人もいるかもしれません。その場合には、相手を何とか頑張って説得するしかありません。
子の母となる女性にとって、ことにシングルマザーになるかもしれない女性にとって、何よりも不安で気がかりになるのは養育費と相続のことです。
そこで、「認知はしないが、養育費は責任をもってきちんと払う。また、相続権は与えられないが、子どもに不利益にならないよう、相続以外の方法で相応の財産が渡るようにする」などという話をして安心させてあげることが必要になります。
そうした説得が功を奏すれば、「そこまで保証してくれるなら……」と最後にはうなずいてもらえるかもしれません。
ただし、認知を求めないという同意をとりつけることができたとしても、そうした約束は子どもの福祉に反するため法的な拘束力はもたないと考えられています。また、母親が約束を守ったとしても、子どもが成長してから自らの意思で認知を求めてくる可能性は十分にあります。そうなれば、もはや潔く応じるよりほかに手はないでしょう。
なお、認知に関しては、〝胎児認知〟、つまりは子どもがまだ生まれる前の胎児の段階で求められた認知を巡るトラブルも少なくありません。認知届は胎児の段階でも提出することが可能です。その場合、子どもの出産によってはじめて認知の効力が発生することになります。一方、死産だった場合には、届出の効力は失われます。
ことに、「子どもができたので結婚してほしい」と迫られたような場合に、「申し訳ないが、妻がいるので結婚はできない」などと応じれば、「じゃあ、せめて、このおなかの子を認知して!」と胎児認知を求められる可能性があります。