新型コロナウイルス感染拡大で医療現場はひっ迫し、医療崩壊ともいわれるなど、現場の医師や看護師、そして病院に注目が集まった。全国に緊急事態宣言が出された大混乱のさなか、ある医師から一本の電話がヘッドハンターにかかってきた。「どうやら資金ショートの噂が広がり、来年の春まで持たない。紹介できる病院はないか」と。もはや病院といえども安心の職場ではなくなった。ヘッドハンターが医師の転職の舞台裏を明かす。

統合再編はあらゆる業界で起きている

当時、国鉄は毎年約1兆円の赤字を出していましたが、JRは初年度から黒字化を果たしています。1兆円の赤字を税金投入で補填していたのに、民営化によって補填が必要なくなったわけです。私の言葉でいうと、国はこれで「味をしめた」のではないかと思います。

 

赤字の空港事業も民営化が図られました。たとえば、名古屋空港は1998年に中部国際空港セントリアとなり、トヨタ自動車などが株主になりました。同じように関西国際空港(関西エアポートが運営)はオリックス、仙台国際空港は東急などの民間企業が入り株式会社化しています。

 

現在、水道事業の民営化が議論されています。水道法の改正が2018年12月に行われました。宮城県は2020年3月、水道事業の運営権を一括して売却する「みやぎ型管理運営方式」による水道民営化の公募を開始。2021年3月に優先交渉権者を決定した後、22年4月に民営化する予定です。大阪市は2020年1月に開いた戦略会議で、老朽化した水道管の交換業務と工業用水事業を民営化する方針を決めました。市が水道設備を保有したまま、運営権を民間事業者に移譲する「コンセッション方式」を導入。早ければ2022年度からの開始を目指していま。水道事業の民営化は賛否両論がありますが、全国の自治体に広がる可能性があります。

 

地方自治体の合併も同じです。1999(平成11)年から政府主導で行われた市町村合併、いわゆる「平成の大合併」は、自治体を広域化することによって各自治体の財政基盤を強化し、地方分権の推進に対応することなどを目的としました。2005(平成17)年前後に最も多くの合併が行われ、市町村合併特例新法が期限切れとなる2010(平成22)年3月末に終了しました。平成の大合併により、全国に3232あった市町村数は半分近くの1727に減りました。

 

今年9月に発足した菅義偉政権は、地方銀行の再編に意欲を示しています。実際、地銀の再編は2000年代に入り徐々に進んでおり、今後加速するとみられています。

 

こうした統合・再編はあらゆる産業界で起こっています。人口減少によって市場が縮小する中で、必然の動きと言えるでしょう。

 

病院も例外ではありません。大学医学部は教育機関なので民営化の話は出ていません。また研究的臨床病院についても、がん研究会有明病院や大阪の国立循環器病研究センターなど研究色の強い病院は今後も国の予算で国家戦略として運営していく見通しです。

 

しかし、それ以外の市中病院については、国が助成金や補助金などの税金を投入するのはいまの財政事情からみて極めて厳しい状況です。市中病院は今後、自立した経営が求められていくことになります。そのために病院の再編は避けて通れない道なのです。

 

武元 康明
半蔵門パートナーズ 社長

 

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