遺言書には大きく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。そのうち「自筆証書遺言」は、相続トラブルの元凶になることがよくあります。今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の竹下祐史税理士が、「自筆証書遺言」を作成するにあたってのポイントを解説していきます。

自筆証書遺言が無効になるケースは?

相続手続に関する業務を進めるなかで、被相続人が自筆で書かれた遺言書(自筆証書遺言)を使うことがあります。

 

なかには、せっかく書かれた遺言書の内容が無効であったり、有効であっても記載に不備があるために登記や銀行手続で使えず、結果として遺産分割協議(相続人全員の同意に基づく手続)が必要になってしまうケースもあります。

 

たとえば、

・自筆すべき箇所を自筆していない

・日付の記載がない

・署名押印がない

・音声で記録されている

・対象となる財産を特定できる情報(土地の地番等)の記載がない

・訂正が正しく行われていない

 

などの場合、遺言者の意思が遺産分割に反映しないばかりか、大きなトラブルになってしまうケースもあります。そこで自筆証書遺言を安全に作成するために注意点や、自筆証書遺言に関する最近の民法改正のポイントをみていきましょう。

 

有効な自筆証書遺言の要件とは?

自筆証書遺言は手軽に作成できるものではありますが、以下の通り民法で厳格な要件が定められています。

 

■自書であること

遺言書の全文が自書である必要があります。パソコンやワープロで作成された遺言は無効となります

 

*平成31年1月13日に改正民法が施行され、遺言書に添付する財産目録の自書が必ずしも必要ではなくなり、パソコンでも作成ができるようになりました。この場合でも、財産目録の各ページに署名押印は必要となります。

 

■日付の記載があること

遺言書が複数ある場合、最も新しく作成されたものが効力ある遺言とされますので、日付の記載が必要となります。年月のみで日付の記載がないもの、X年X月吉日といった記載の場合は無効となります。

 

■自書の署名・押印があること

押印は実印でも認印でも認められますが、実印の方が望ましいでしょう。

 

■訂正が適切に行われていること

文言の一部を訂正する場合には、署名、訂正印や「2文字削除1文字追加」などの記載が必要となります。適切に行われていない場合、遺言全体として無効にはなりませんが、訂正自体が無効とされてしまいます。

 

きちんと要件を抑えて(※画像はイメージです/PIXTA)
きちんと要件を抑えて(※画像はイメージです/PIXTA)

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」

 

■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ

 

■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】

 

■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

次ページ今年の7月から自筆証書遺言を保管してくれる制度がスタート

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録