相続対策として賃貸物件を建てる土地オーナーは多いですが、その建物の名義を親にするか、子どもにするかで大きな違いが生じます。相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の天満亮税理士が、親名義にしたほうがいいケース、子ども名義にしたほうがいいケース、それぞれを解説します。

「親名義」で建てたほうが得するのは?

自宅以外に親名義の土地があり、そこに賃貸建物を建築する計画を立てている家族から、次のようなご相談を受けることがよくあります。

 

「賃貸建物は、親名義で建てるべきか? 子名義で建てるべきか?」

 

この質問に対する正解は、1つではありません。

 

・親の年齢は? 子の年齢は?

・親の年収は? 子の年収は?

・現状で親に万が一のことがあった際に、相続税はどの程度発生する見込みなのか?

・そもそも、何を心配してこのような質問をしたのか?

・同族法人を所有しているか?もしくは設立するつもりがあるか?

 

こういったことを総合的に勘案してからでないと、質問者の期待に添うような回答はできません。

 

そんな中で代表的な2つのケースを、簡単に解説していきます(法人名義で建てるという選択肢もありますが、ここでは省略します)。

 

相続対策でアパート経営(※画像はイメージです/PIXTA)
相続対策でアパート経営(※画像はイメージです/PIXTA)

 

(1) 親が高齢で、かつ相続税が多額にかかる見込みの場合

このような場合は、とにかく「相続税」の対策を重視して考えることになります(実際には遺産分割対策や納税資金対策も同時並行で考える必要がありますが、ここでは省略します)。

 

結論は、「親の名義で建てるべき」となります。

 

建築資金は、銀行借入金でも、もともと持っていた預貯金でも、どちらでも構いませんが、「預貯金」という財産が「家屋」という財産に変わることにより、相続財産を一時的に大幅に圧縮することができます。

 

「家屋」の相続税評価額は、役所から毎年通知が来る固定資産税評価額を使用します。家屋の固定資産税評価額が、初年度から建築資金の半分以下になることも珍しくありません。たとえば1億円の「預貯金」は、建築資金に充てずにそのまま所有していたら相続税評価額は当然1億円のままですが、その1億円を建築資金にあてて「家屋」という財産に形を変えると、相続税評価額は5,000万円程度にもなりうるということです。さらに、賃貸建物を前提としていますので、借家権割合30%を除いて3,500万円程度の評価額となります。

 

賃貸建物を建てると、「家屋」だけでなく、その敷地の「土地」の相続税評価額も減ります。「土地」も「家屋」も親が所有していて、その「家屋」が賃貸建物である場合、「土地」は貸家建付地という評価をしますので、更地や自宅の場合の評価額の80%程度(その地域の借地権割合により変動)の評価額となります。

 

その一方で、賃貸建物の賃料収入は建物の所有者に入ることとなるので、親名義で建てると賃貸収入は親に入ってきて、長期的には親の金融資産が増え続けていくことになります。もともと高収入の親であれば、毎年の所得税もさらに高くなってしまいます。

 

したがって、親の年齢が若く、さらに現状で親が高収入であれば、相続税の対策としても所得税の対策としても効果的ではない、ということになります。

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