鉄筋が錆びて膨張し、周辺のコンクリを破壊する…
先に触れたように、コンクリートの主成分は石灰石です。その特性のひとつにアルカリ性の強さがあります。つまり鉄筋コンクリートとは、アルカリ性が非常に強いコンクリートのなかに鉄筋が入っているものです。内部の鉄筋はアルカリ性に守られて錆びません。実はそれにより建物を支える強度が維持されているというのが、鉄筋コンクリートの強さの基本なのです。
コンクリートの寿命を測る尺度はいくつかあります。ただし、鉄筋コンクリート自体のアルカリ性が失われることが強度に及ぼす影響は非常に大きく、直接的にマンションの寿命にかかわる条件となっています。なぜでしょう。
それは、コンクリートの素材である石灰石のアルカリ性度は時間の経過とともに低下していくからです。その結果、コンクリートは中性化していきます。そこで発生するのが、内部の鉄筋の腐食です。鉄筋が錆びて膨張することで、ついには周辺のコンクリートを破壊してしまうのです。
これが一番顕著なコンクリートの弱点であり、建物崩壊のメカニズムと考えられています。つまり、コンクリートをいつまでもアルカリ性に保てれば、この崩壊のメカニズムは防げるのです。
■コンクリートは「アルカリ性」が失われると劣化する
コンクリート中性化の防止が、マンションの強度維持の鍵になることはおわかりいただけたと思います。それを防ぐためには、まず、なぜアルカリ性が失われていくのかを理解することが必要です。その原因もまたひとつだけではありません。なかでも、はっきりとわかっている要因は空気と水です。
雨が降ると、マンションのコンクリートを雨水が濡らし染み込みます。大気中を落ちてくる過程で、この雨水には空気に含まれる二酸化炭素が溶け込んでいます。ソーダ水をイメージすれば近いでしょう。つまり、酸性の雨水がコンクリートに染み込むのです[図表2]。
コンクリートの中性化は、この雨水の酸とコンクリートのアルカリが反応することで起こります。さらに雨水の酸だけではなく、湿潤したコンクリートには空気中の二酸化炭素そのものも溶け込みますから、それによっても酸化作用は一層進み中性化が促進されることになります。では、それを防ぐにはどのような手段が有効なのでしょうか。