このような最高裁の判断の理由として、判例タイムズ1195号 100頁は
「遺産分割前の時点において、遺産から生じた果実は、相続開始によって遺産共有となった財産を使用管理して収取されるものとなることから、遺産とは別個の、共同相続人の共有財産であると解するのが相当である。
そして、遺産たる賃貸不動産から生じた賃料債権は、可分債権であるから、民法427条により、当然に分割されて、共有者である共同相続人がその共有持分である法定相続分に応じて、単独分割債権として取得するものと解される(奥田昌道・債権総論335頁、340頁等。なお、賃借権を共同相続した場合の賃料債務は不可分債務となる。)。
さらに、以上にかんがみれば、遺産共有の状態にある賃貸不動産から生じた賃料債権について、遺産とは別個の財産として、各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として取得したものとする以上、その帰属は確定したものであって、遺産分割の効力を受けないものと解するのが相当である。」
と解説しています。上記判断を本件に当てはめると、
父死亡後、遺産分割が確定するまでの間のアパート賃料については、長男と次男が法定相続分の2分1ずつ取得する
ということになります。これは、後の遺産分割協議で次男がアパートを単独で相続するということになっても変わりません。
したがって、次男としては、遺産分割が確定するまでの間は、アパート賃料の2分の1相当額については、長男(もしくは賃借人)に請求することができるということになります。
なお、実務上は、遺産分割協議が確定するまでの間は、相続人間で合意して相続人の誰かが代表して賃料債権を回収・管理してその都度分配したり、遺産分割協議・調停の中で遺産と併せて分配について協議する、という方法が執られることが多いです。
※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。
北村 亮典
こすぎ法律事務所 弁護士
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