「二郎の相続のことだけど」姑は驚愕の提案を…
葉子さんが「二郎の遺産の相続のことだけど、法律通りにあなたが3分の2、私が3分の1ということでいいわね」と切り出してきました。
由美子さんが、「家は2人でお金を出し合って買ったものですから、預金だけ分ければいいですか」と確認すると、葉子さんは「あなた方の家は東京のいいところにあるんだから、それだけでは足りないでしょ。家の分も含めてきっちり3分の2を私にちょうだい」と言ってきました。
由美子さんが、「家は2人のものなので、手放したくはありません。預金だけで勘弁してください」と言っても、葉子さんは「私から二郎を奪っていった上、二郎のお金まで独り占めしようとするなんて盗人猛々しい」と言って、頑として聞き入れようとしませんでした。
仕方なく、由美子さんは相続財産の一覧表を作り、葉子さんに郵便で送りました。その中に、「二郎さんの預金1500万円と自分の預金500万円の合計2000万円を現金で払う代わりに、家は由美子さんが相続する」という提案を入れたのです。
さすがの葉子さんも「家の評価が低すぎる」(路線価は一般に市場価格の70%と言われています)とまでは言ってこず、これでようやく相続の話がまとまったのです。
ここで見てきたように、相続という言葉は、あたかも年上の人から年下の人に財産を譲っていくようなイメージがありますが、それだけではありません。子供のいない夫婦で片割れが亡くなると、残された配偶者が、亡くなった配偶者の親と財産を分け合うことになるのです。
鈴木二郎さんの場合のように、本人の享年が66歳、お母さんが88歳ですと、超高齢化社会の今日、お母さんが生きていても何の不思議もありません。
こういうとき、嫁姑の仲がいいなら、お母さんは、「私はもう老い先が長くないから、あなたが全部相続しなさい」と言ってくれるのですが、こじれているとそうはいきません。 嫁姑の仲が悪いと、姑はこのときこそと言わんばかり、自分の権利を主張してくるのです。やっぱり、家族は仲良くしておくのが一番ですね。
それと、亡くなった二郎さんには気の毒ですが、子供のいない夫婦なら、早くお互いに遺言書を作っておくべきでしたね。もちろん、親にも遺留分と言って、最低限遺産を相続する権利は認められますが、子供が遺言書で明確に、「自分の遺産はすべて愛する妻(夫)に譲る」と書いていれば、そこまでの権利は主張してこなかったのではないでしょうか。
植田 統
青山東京法律事務所 代表弁護士
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