本記事では、嫁姑の関係が相続に影響してくるケースを見てみましょう。読者の皆さんは、きっと嫁姑の関係なんて、相続に関係ないだろうと考えていらっしゃると思います。ところが、子供のいない夫婦が増えた今日、それが大問題となるのです。 ※本記事は、青山東京法律事務所の代表弁護士・植田統氏の書籍 『きれいに死ぬための相続の話をしよう 残される家族が困らないために必要な準備 』(KADOKAWA)より一部を抜粋したものです。
二郎さんの預金は1500万円。姑の取り分はなんと…
由美子さんが「証明と言われても、ありません。うちは、住宅ローンは二郎が全部払う。その代わり、生活費は私が出すという役割分担でやってきたんです」と答えると、弁護士さんは、「そうなると、家はやっぱり二郎さんのものということになりますね。家についても、3分の1の権利はお母様に行ってしまいます。預金もそうなりますよ」と言います。
さらに、弁護士さんは付け加えて「勿論3分の1というのは、相続財産の3分の1ということなので、あなたが家を相続し、お母様に預金を多めに渡してもいいのです。結果、3分の1がお母様に行けばいいのです。ただ、お母様が納得されるという条件付きです」と言いました。
由美子さんはショックを受け、家に帰って、二郎さんと自分の通帳の残高を調べることにしました。すると、二郎さんの預金は1500万円。二郎さんは、退職金で住宅ローンの残債を払い、定年退職してからの6年間ゴルフ三昧の生活を送っていたので、意外に預金が少なかったのです。
それから、由美子さんは、自宅のだいたいの価格も調べてみることにしました。路線価をインターネットで調べてみると、1平方メートルあたり30万円。120平方メートルの土地だから、3600万円の価値があるということがわかりました。
それから、家については、固定資産税の納付書を見ると、固定資産税評価額というのがあって、900万円と書いてありました。
二郎さんの遺産を合計すると、合計4500万円の自宅と1500万円の預金で6000万円。これをお母さんに3分の1分けるとなると、2000万円分をお母さんに渡さなければなりません。
もし自宅に1人で住み続けるなら、二郎さんの預金だけでなく、自分の預金からも出して、お母さんに500万円あげなければいけないのかと思うと気が重くなりました。
そして、四十九日の日。葉子さんが田舎から朝一番の飛行機でやってきました。法要を済ませ、親戚一同との会食を日本料理のお店で済ませたのが、午後2時。それから、由美子さんと葉子さんは、ホテルの喫茶室で相続の話をすることになりました。
青山東京法律事務所 代表弁護士
1981年に東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、外国為替、融資業務等を経験。
その後、アメリカ ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、世界の四大経営戦略コンサルティング会社の一角を占めるブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)に入社し、大手金融機関や製薬メーカーに対する経営戦略コンサルティングを担当。
その後、転じた野村アセットマネジメントでは資産運用業務を経験し、投資信託協会でデリバティブ専門委員会委員長、リスク・マネジメント専門委員会委員長を歴任。
その後、世界有数のデータベース会社であるレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長となり、経営計画の立案・実行、人材のマネジメント、取引先の開拓を行った。弁護士になる直前まで、世界最大の企業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズに勤務し、ライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当した。
2010年弁護士登録を経て南青山M’s法律会計事務所に参画し、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。
現在は、銀行員、コンサルタントと経営者として蓄積したビジネス経験をビジネスマンに伝授するため、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義するほか、数社の社外取締役、監査役を務めている。過去5年間に、経営、キャリア、法律分野で精力的に出版活動を展開している。
主な著書に「きれいに死んでいくための相続の話をしよう」(KADOKAWA)、共著に「マーケットドライビング戦略」(東洋経済新報社)「企業再生プロフェッショナル」(日本経済新聞出版社)など。
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連載きれいに死ぬための相続の話をしよう~残される家族が困らないために必要な準備