本記事では、嫁姑の関係が相続に影響してくるケースを見てみましょう。読者の皆さんは、きっと嫁姑の関係なんて、相続に関係ないだろうと考えていらっしゃると思います。ところが、子供のいない夫婦が増えた今日、それが大問題となるのです。 ※本記事は、青山東京法律事務所の代表弁護士・植田統氏の書籍 『きれいに死ぬための相続の話をしよう 残される家族が困らないために必要な準備 』(KADOKAWA)より一部を抜粋したものです。
「穏やかに老後を過ごそう」ところが突然の事態が…
ところが、二郎さんが突然心筋梗塞で亡くなってしまいました。まだ、66歳でしたが、脂っこいものが好きで、コレステロール値が高かったことがたたったようです。由美子さんは悲しみに打ちひしがれながらも、何とか喪主として葬式を終えました。
早くも四十九日の法要の時期になり、また田舎から葉子さんに出てきてもらわなければなりません。
そこで、由美子さんが葉子さんに電話を入れると、葉子さんは、「わかりました。朝一番の飛行機で行きますから、時間は少し遅めにしてね。それから、法要の後、少し時間を取ってちょうだい。相続の件で相談したいから」と言ってきました。
由美子さんは、「相続のことって何だろう」と思いました。当然、二郎さんの遺産は全部自分が相続するのだろうと思っていたのです。
でも、由美子さんは、葉子さんにはっきりと「相続の件」と言われたのが引っかかって、知り合いの弁護士さんに相談してみることにしました。
3日後にアポを入れて弁護士事務所を訪ねて、自分の家族関係の説明を始めました。弁護士さんから「そうすると、あなた方ご夫婦には、お子さんが無いのですね。そして、二郎さんのお母さんは生きておられるのですね」と確認されたので、由美子さんは「その通りです」と答えました。
次に、弁護士さんは、「二郎さんは、何か遺言書のようなものを書いたことはありませんか」と尋ねてきました。由美子さんは、「何分まだ66歳だったので、遺言書など考えたこともなく、何も準備していません」と答えます。
すると、弁護士さんは、「となると、お母様の言うことが正しいですね。二郎さんの遺産は、あなたが3分の2、お母様が3分の1を相続することになります」と言ってきます。
由美子さんはビックリして、「そうすると、今住んでいる家も手放さなければいけなくなるんですか。家は二郎名義になっているんですが、実は私のお金もいくらか入っているんです。どうしたらいいのでしょうか」と尋ねると、弁護士さんは「あなたのお金が入っているということを、何か証明する方法はありますか」と聞いてきます。
青山東京法律事務所 代表弁護士
1981年に東京大学法学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行し、外国為替、融資業務等を経験。
その後、アメリカ ダートマス大学MBAコースへの留学を経て、世界の四大経営戦略コンサルティング会社の一角を占めるブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)に入社し、大手金融機関や製薬メーカーに対する経営戦略コンサルティングを担当。
その後、転じた野村アセットマネジメントでは資産運用業務を経験し、投資信託協会でデリバティブ専門委員会委員長、リスク・マネジメント専門委員会委員長を歴任。
その後、世界有数のデータベース会社であるレクシスネクシス・ジャパン株式会社の社長となり、経営計画の立案・実行、人材のマネジメント、取引先の開拓を行った。弁護士になる直前まで、世界最大の企業再生コンサルティング会社であるアリックスパートナーズに勤務し、ライブドア、JAL等の再生案件、一部上場企業の粉飾決算事件等を担当した。
2010年弁護士登録を経て南青山M’s法律会計事務所に参画し、2014年6月独立して青山東京法律事務所を開設。
現在は、銀行員、コンサルタントと経営者として蓄積したビジネス経験をビジネスマンに伝授するため、社会人大学院である名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授として企業再生論、経営戦略論を学生に講義するほか、数社の社外取締役、監査役を務めている。過去5年間に、経営、キャリア、法律分野で精力的に出版活動を展開している。
主な著書に「きれいに死んでいくための相続の話をしよう」(KADOKAWA)、共著に「マーケットドライビング戦略」(東洋経済新報社)「企業再生プロフェッショナル」(日本経済新聞出版社)など。
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連載きれいに死ぬための相続の話をしよう~残される家族が困らないために必要な準備