白内障とは、加齢によって目の中でカメラのレンズのような役割を担う水晶体が白く濁り、視力が低下する病気です。60代で約半数、80代に至ってはほぼ全員が、程度の差こそあれ白内障にかかります。高齢化に伴い、今や「目の国民病」と言っても過言ではないこの病気について、眼科専門医が症状と治療法を平易に解説します。※本記事は『図解 白内障かなと思ったら読む本』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

ポイント4:視能訓練士がいるか?

視能訓練士とは、視力検査や視野検査など眼に関わる検査や、子どもの弱視訓練など、眼に関する検査を行う専門職です。国内では1971年に誕生し、国家資格となっています。残念ながら認知度はあまり高くありませんが、視能訓練士になるための短大や大学があります。皆さんの中にも、もしかしたら「初めて聞いた」という人がいるのではないでしょうか。

 

「それじゃ、眼科医院で視力検査をしてくれる人はみな、視能訓練士なの?」

 

といえば、実はそうとは限らないのです。現在のところ、視能訓練士の資格がないと検査に携われない、という法律はありません。

 

白内障に関しても同じで、必ずしも検査やアフターフォローを行うスタッフが視能訓練士とは限りません。視能訓練士は術後の見え方についても熟知しており、例えば術後、見え方に今一つ満足がいかないとか、術前と見え方に大きな変化があり慣れない、といった患者さんの悩みに対し、視機能のスペシャリストの立場からアドバイスしたり、訓練したりもできます。

 

手術前にも、今の目の状態から術後はこういう見え方を選ぶほうが良いですよ、というアドバイスもできます。視能訓練士の資格がなくても、これらに長けたスタッフはいると思いますが、やはり国家資格を持っている人からのほうが患者さんもより安心でしょう。

 

当院にも6名の視能訓練士が常勤しています。眼内レンズを決める検査をはじめ、種々の検査を担当して、術後の相談にものっています。手術を検討している医療機関に、「視能訓練士はいますか?」と一言聞いてみると良いでしょう。

ポイント5:「今すぐ手術を」と強要してこないか?

白内障と診断されて「今なら手術室の空きがあるから、すぐできますよ」と言われたら、皆さんはどのように思われるでしょうか。「すぐ手術してくれるとは、ありがたい」とばかりに、その場で決めてしまうでしょうか。一見、迅速に治療してくれる親切な医院のように思われるかもしれませんが、実は要注意。中には「手術件数をかせぎたい」がため、質に重点をおいていないところもあるからです。はっきり言ってしまえば「多かろう悪かろう」というわけです。

 

そもそも、眼内レンズにはメーカー、度数、乱視矯正機能の有無などたいへん種類が多く、それらすべてを在庫として常時院内においておくのは、まず困難といっていいでしょう。通常、検査をして眼内レンズを決めたら、在庫があればそれを使いますが、なければメーカー等に発注し、取り寄せることになります。取り寄せには、数日~1週間程度はかかりますので、手術はその後の日程で組む必要があります。

 

すべての医院がそうではありませんが、手術を急ぐところはもしかしたら、レンズの選択がアバウトで、院内の在庫にあるものからしか選んでいない可能性もあります。

 

たとえそれが患者さんに合っているものだとしても、もし、もっとよく説明を聞きたいのに、「すぐ手術を」の一点張り、という印象を受けたら、いったん保留にし、帰宅する勇気を持つことも、納得のいく手術のためには大切だと考えます。白内障手術は見え方が不便であれば早いほうがいいのは確かですが、1日2日を争うような病気ではありません。

 

手術を受けてしまってから「こんなものかな」「期待していたほど見えなかった」となるよりは、セカンドオピニオンをとるなどしながら、良い医院をじっくり見極め、満足度の高い見え方を得られるほうが、その後の人生の幸福度を上げることは明らかです。

 

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図解 白内障かなと思ったら読む本

図解 白内障かなと思ったら読む本

川原 周平

幻冬舎メディアコンサルティング

目がかすむ、眩しい、ダブって見える…。その症状、白内障かもしれません。 いまや「目の国民病」といっても過言ではない白内障ですが、近年では精密な器具の開発等により、手術の安全性は高まっています。 とはいえ、納…

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