白内障とは、加齢によって目の中でカメラのレンズのような役割を担う水晶体が白く濁り、視力が低下する病気です。60代で約半数、80代に至ってはほぼ全員が、程度の差こそあれ白内障にかかります。高齢化に伴い、今や「目の国民病」と言っても過言ではないこの病気について、眼科専門医が症状と治療法を平易に解説します。※本記事は『図解 白内障かなと思ったら読む本』(幻冬舎MC)から抜粋・再編集したものです。

ポイント8:手術時間の短さを強調していないか?

かつて器具や技術が発達していなかった時代は、白内障手術も入院を要していました。しかし今は、高齢で通院が困難などの特別なケースを除き、日帰り手術が主流です。そのせいか、簡単に手術が受けられることばかりがクローズアップされ、手術時間も短いほど良い、といった風潮がどうも白内障手術にはあるような気がしてなりません。実際に「5分で終わる」といった宣伝文句も多く見かけます。

 

私ももちろん、手際よく迅速に行うことを心掛けています。しかしそれはあくまでも「正確さ」や「丁寧さ」とセットであることが前提です。これらをすべて最高の質でクリアするには、最短でも7、8分はかかります。おおむね10~15分程度。これが白内障手術にかかる標準的な時間といえます。もちろんこれは、術中の突発事項がなく、予定どおり進んだ場合です。

 

さすがに、何もアクシデントなどないのに、30分程かかるようなところは、腕に疑問を持たざるを得ませんが、逆に、3~5分などと喧伝しているところも考え物です。上手であることは間違いありませんが、一つひとつのプロセスが雑だったり、端折っていたりする可能性があると、言わざるを得ません。

 

例えば、眼内レンズを入れてから、眼の中にクッション代わりに入れていたヒアルロン酸を洗い流す、というプロセスがあります。これを雑にしてしまうと、感染症のリスクが高まります。眼の中を清潔にすることはとても大事。

 

また、後発白内障が起こりにくくするために水晶体囊をできるだけきれいに磨くという操作もひと手間にはなりますがやるかやらないかということもあります。手術は単に水晶体をレンズに入れ替えるだけ、というものではありません。そうした細かい手間をかけて丁寧にやっていくのです。

 

1時間かかる手術が10分ですむようになった、という話であれば画期的ですが、10分程度の手術が5分、であれば、その5分で患者さんの体力が大きく消耗するかといえば、白内障手術ができる健康状態の方ならまず問題になりません。それよりも、患者さんの術後の経過まで考えた処置をきちんと、丁寧にしてくれて10分かかるというほうが、受けられる恩恵は大きいでしょう。
 

 

 

 

『図解 白内障かなと思ったら読む本』より
 

川原 周平

医療法人 iMEDICAL 川原眼科 理事長

眼科専門医

 

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図解 白内障かなと思ったら読む本

図解 白内障かなと思ったら読む本

川原 周平

幻冬舎メディアコンサルティング

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