前回は、筆者が代表取締役を務める運用会社「スパークス」が、バブル崩壊後の局面でも運用資金を減らさなかった要因を紹介した。今回は、ソフトバンクとファーストリテイリングが、20年という短期間で日本を代表する巨大企業になった理由を見ていきたい。

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アナリストの想像をはるかに超えた成長

筆者はスパークス創業以来、多くの企業を見てきたが、その中でも企業の本当の成長というのを教えてくれたのが、ソフトバンクとファーストリテイリングの2社である。筆者は両社ともに上場した頃から継続して調査をし、投資もしてきた。しかしながら、この2社が上場以来20年間実現した成長は私たちアナリストの想像をはるかに超えていた。

 

確かにどちらも素晴らしい企業だと感じたし、大きな成長を遂げるだろうとは思っていた。しかし、20年という短期間で日本を代表する巨大企業になることは、想像できなかった。だから、ここに書くのは、ある意味では後付けの理由である。現在の地点から振り返れば、確かにこの2社には大きく成長する企業の条件が備わっていた。というより、この2社が成長したために、成長する企業とはどのようなものかを筆者が学ばせてもらったと言ったほうがいいだろう。

 

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長期的企業成長に不可欠な「経営者のリーダーシップ

それはどのようなものか。まず、企業というのは、経営者が明確なビジョンと強い意思(執念)を持って、それを実行し実現すると、予想以上の成長を遂げる。その意味では、大きく成長するために最も必要なのは経営者の成長に対する強烈なコミットメントだ。

 

投資先企業を選定するための条件として、経営者、ビジネスモデル、市場の三つを挙げた。確かに、短期的な成長を見るのであれば、ビジネスモデルと市場が大切なのだが、長期的企業成長は圧倒的に経営者、そして経営者のリーダーシップに依存する。経営者のマネジメント能力の質が高ければ、当初のビジネスモデルや市場を変えることで、大きく成長を実現することがしばしばあるからだ。そして、そこに資本市場の信任が得られれば、その成長はさらに大きなものとなる。

 

もちろん、これらは今だからこそ言えることだ。スパークスは、2社とも上場した時から見ていたし、上場時に優れた企業だと判断し投資したが、成長の途中でその多くを売却してしまった。なぜなら、この2社の株価は、スパークスが売却した時点で大幅に上昇していたし、また、さまざまな株価指標と照らしても割高な水準だったからだ。

 

しかし結果的には、この2社はそれ以降も成長を続け、高い株価を正当化していく実績を上げていったわけだから、筆者の見立ては間違っていたことになる。言い訳になるが、バリュー投資の視点から評価すると、これだけの株価上昇を予見することは極めて難しいものだ。特に、スパークスのような投資会社が恒常的に割高に評価されている銘柄に長期的に投資し続けることは極めて難しい。

両社の共通点はマネジメントの質の高さ

プロの投資家には予見しづらいような利益・株価の成長を実現したという意味で、この2社は、企業成長と株価の代表的なケースとして日本の金融史に残ると思っている。ソフトバンクとファーストリテイリングの2社には次のような共通の特徴があった。

 

①あくなき成長への強い意思を、企業カルチャーにまで落とし込んでいる。

②三つの輪(ビジネスモデル、マーケット、マネジメント)の条件を満たしている。

 

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逆に、2社には異なる特徴もある。これらの特徴は、企業の本質的な成長性とは無関係であるものと考えられる。

 

①ソフトバンクはハイテク製品を扱っているが、ファーストリテイリングはローテク製品を扱っている(どのような市場でも成長できる)。

 

②ソフトバンクのビジネスモデルは、インターネットという新しい市場の創造であるのに対し、ファーストリテイリングのビジネスモデルは小売りと製造の統合によるローコスト化と商品の独自ブランド化である(マーケットに合わせたビジネスモデルが必要だ)。

 

③つまり両社の共通点はマネジメントの質の高さであり、マーケットやビジネスモデルはビジネスの規模拡大と環境に合わせて継続的に変化・変質していった。

 

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本連載は、2015年1月22日刊行の書籍『株しかない』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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阿部 修平

幻冬舎

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