筆者が代表取締役を務める「スパークス」は、日本経済のバブル崩壊で日経平均株価が下落する中でも、運用残高を増やし続けることができた。今回は、その理由を解説する。

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独自調査で投資判断ができる店頭登録銘柄に特化

1989年7月にスパークス投資顧問を設立してから数カ月後、日経平均株価はその年の12月をピークに下落局面に入った。当時、スパークスは中東の国家ファンドから100億円、その他生保や銀行などから200億円あまりを預かって運用していたので、本来であれば株価の値下がりで運用資金を減らしてしまうところだったが、幸いそのようなことはなかった。逆に、1990年の半ば頃までは、スパークスの運用残高は増え続けた。

 

なぜ、株価の下落局面でそのようなことが可能だったのかと言えば、スパークスが店頭登録銘柄(現JASDAQ市場上場銘柄)に特化していたからだ。店頭登録銘柄とは簡単に言えば、上場して日が浅いベンチャー株や小型株の市場だ。現在はJASDAQ市場となって、他の銘柄と同様に取引できるようになったが、当時は店頭登録市場といわれて取引にはいろいろな制限がついていた。証券会社からの調査レポートはなく、独自に調査して投資判断をするプロ向けの市場だったわけだ。

 

スパークスが店頭登録銘柄に特化した理由の一つは、スパークス自身がベンチャー企業として何らかの差別化が必要だと思ったからだ。また、当時の海外機関投資家は国際分散投資の一環として日本株を組み入れていたが、投資対象となるのは東証一部上場のハイテク輸出企業がほとんどで店頭登録企業は全くといっていいほど知られていなかった。独自の調査をベースとした小型株ポートフォリオの戦略は非常に魅力的な新しいアプローチだった。

ベンチャー株、小型株で割安な成長株に資金を集中

そればかりではない。店頭登録銘柄は証券会社の調査対象外だったことから全体的に割安な株が多く、投資対象として非常に魅力的であった。当時日本経済は絶好調で、大手企業の株価は軒並み高くなっていたから、次は中小の店頭登録銘柄など割安な成長株に資金が向かうであろうと考えた。

 

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店頭小型株投資のレポートを持って訪問した中東国家ファンドの担当者は、筆者の話をよく理解してくれた。国際分散投資の観点から、日本の中・小型株にも投資をしておくことがリスクヘッジとして大きな意味があると、店頭小型株ファンドへ100億円の投資をしてくれた。

 

ところが、資金を預かって間もないうちに訪れたのが、日本経済のバブル崩壊だ。幸いなことに店頭登録銘柄に特化していたために株価下落に時間差があって、バブル崩壊の直撃は免れたが、先行きは決して明るくなかった。

 

スパークスが幸運だったのは、日経平均株価が下落を始めた時に、大型株から逃げ出した資金が相対的に割安だった店頭登録銘柄に向かったことだ。スパークス創立1周年にあたる1990年の7月までは日経平均株価がどんどん下落する中で、店頭登録平均株価だけは1700円から4100円へと2.4倍以上に上昇した。

 

そのおかげで会社の礎ができ上がったともいえる。もし、この時の店頭登録平均株価の上昇がなかったとしたら、設立したばかりのスパークスはあえなく倒産の憂き目にあっていたかもしれない。しかし、1990年7月からは店頭登録平均も下落に向かい、スパークスの資金運用も苦戦を強いられた。生保や銀行などの日本の金融機関は、株価が下落局面に入ると投資をさっさと引き上げてしまった。そんな中、中東国家ファンドは、引き続き資金運用を任せてくれた。

 

海外の成熟した投資家のありがたさを感じた筆者は、その後も海外への営業に力を入れて、エドモンド・ロスチャイルド銀行(イギリスにあるロスチャイルド家四兄弟の長男の銀行)、ロンバー・オーディエ銀行(1796年に設立されたスイスの由緒あるプライベート・バンク)などの一流機関投資家を顧客に持つに至った。

 

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本連載は、2015年1月22日刊行の書籍『株しかない』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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阿部 修平

幻冬舎

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