不動産の「共有」だけは絶対に避ける
ケース1
Bさんはすでに夫を亡くし、一次相続で財産を相続しました。Bさんには2人の子がおり、長女はBさんと同居していますが、長男は会社員で地方へ単身赴任しています。財産は、自宅と1件の賃貸マンションです。
このような場合、Bさんは同居している長女に自宅敷地を相続させれば、小規模宅地等の特例が使えるので税金は安くなります。
しかし、親というのは「子には平等に相続させたい」と思うもの。相続税額だけを考えれば長女に相続させたほうが有利でも、Bさんにとってそれは机上の空論です。
とはいえ、財産が平等に分けられるような構成なら問題ありませんが、自宅と1件の賃貸マンションといった財産構成の場合、少し厄介です。平等にこだわると、不動産を共有にするという答えになりやすいからです。
しかし共有は、〝争続〞を避けるため、極力避けたい方法です。今は仲がよくても、先を見据えた場合、仲が悪くなることも十分あり得るからです。
そこで私は、Bさんにもう1件賃貸不動産を購入し、それぞれで1件ずつ所有させることを提案しました。Bさんはその方法を選択され、ご希望通り平等に財産を渡すことに成功しました。
■相続税の減額だけを目指すと、兄弟仲がこじれることも
ケース2
資産家Cさんは、相続税対策として法人化を実行し、賃貸用建物をその法人に譲渡しました。そして、その賃貸用建物からの家賃収入を3人の子に分配しています。しかし、相続が発生する前に賃貸不動産をもう2件購入し、子1人につき1件という形で相続する計画を立てています。
なぜこのような形にするかというと、一番下の弟が「真ん中の兄さんといつまでも一緒に法人をやりたくない」と言い出したためです。
このようなケースはよく見られます。最初はよくても、数年後に誰かの経済状況が悪化したり、あるいは何かのきっかけで亀裂が入ったりして、兄弟の仲がうまくいかなくなることがあるのです。