コロナ禍においては、学校の授業も従来の方法から変更を余儀なくされ、オンラインを導入するところが増えています。しかし、その学習効果を不安視する保護者は少なくありません。ハーバード大学、東京大学、開成高校のそれぞれで教鞭をとったベテラン教育者で、東京大学名誉教授・北鎌倉女子学園学園長の柳沢幸雄氏が、子どもたちの現状を伝えるとともに、不安を抱える親へアドバイスします。※本連載は、『「頭のいい子」の親がしている60のこと』(PHPエディターズ・グループ)より一部を抜粋・再編集したものです。

 

当初、オンライン授業は味気ない、という思いはありましたが、多様な生徒を包み込むメリットがあるという大きな発見がありました。そして何より、これからもあるかもしれない長い休校に、今後はしっかり対応できます。「対面でないとダメだ」ではなく、「対面もオンラインもあり」。

 

ピンチになったときに切り替えられる手段があることは、今後の教育に大きな一歩を踏み出せたと思います。今までの感覚でベストを目指すと、「教師と生徒が対面で授業をする、それ以外は劣っている」ことになってしまいますが、ベター・セレクションによって得られるメリットは大きい。新しい授業の形が生まれたので、教師はこの形の中で、よりよい授業の技術を磨くという新たな課題をつきつけられました。

 

が、それもまた、教師自身の学びとなり、伝達技術の上達につながるよい機会だと、ポジティブに考えたいと思います。オンライン授業は、教育の「ニュー・ノーマル」になるでしょう。公立の学校では、まだオンライン授業をやるICTの環境が整っていない、環境が整っていたとしても、小学校低学年と中学年は自分でパソコンを扱うには難しい、という課題があると思います。

 

そこは、プリント授業で補うなど、教師や学校の努力が必要になりますが、国として、早急に環境を整えてもらいたいと考えます。

生徒同士が問題を出し合う授業で、議論も活発に

オンラインの授業だと、先生がひたすらしゃべって生徒が聴くだけになりがちです。そこをどう打破するかが、教師の手腕です。工夫の余地はさまざまあるのです。たとえば、国語であれば、予習でクラス共通の文章を読んでくる。短編小説でもいいでしょう。読後感について討議するような授業は、双方向の授業として活発な意見を交わせると思います。

 

ビデオ通話をしながらでもいいですし、人見知りの子どもなら、同時に配信できるチャットで意見を言ってもいい。自由度が高いのも、オンライン授業のメリットです。理科や社会であれば、生徒が問題を作って他の生徒に解いてもらう。クラス全員、一人ひとりが問題を作り、全員で解く形を作ります。解答をお互いに共有し、問題を作った人と解答をした人との間でディスカッションをするのも新しい学習スタイルとして有効です。

 

話し合うことでクラスがいきいきとしてきます。正解がわかりやすい問題でもいいし、正解が出ない問題でもいい。クイズのような問題でもいいのです。「徳川家康は『たぬき親父』と呼ばれていましたが、なぜでしょう?」など。クラス全員でワイワイと話し合い、不正解の解答もみんなで笑い合い、楽しみ、「そうじゃなくて!」などと言い合えば、しっかりと内容が定着できるというメリットがあります。

 

生徒や保護者の側から、このような双方向授業の提案をしてもいいかもしれません。こうしたことは、家庭学習でも有効です。子どもが問題を作って、親が答える。わかる問題もあれば、わからない問題もあっていいのです。子どもが自慢げに教えてくれるでしょう。親に教えることは子どもの快感です。

 

「へぇ、そうなんだ!」などと感心しながら子どもの解説を聞くと、ますます本人は楽しくなってきます。自然と学校の授業の復習になり、これも知識の定着が期待できます。

 

 

柳沢 幸雄

東京大学名誉教授

北鎌倉女子学園学園長

「頭のいい子」の親がしている60のこと

「頭のいい子」の親がしている60のこと

柳沢 幸雄

PHPエディターズ・グループ

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