弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所の代表弁護士である三平聡史氏は『ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表』(日本加除出版)のなかで、富裕層の離婚問題について様々な事例を取り上げ、解決策を提示しています。

夫の株式が分与対象にならなかった!そのワケは…

<合意成立のポイント>

 

1 会社保有財産の扱い

会社の財産の管理は家計とは明確に区別されていたので、会社の保有財産を分与対象とはしないこととなりました。

 

2 夫が保有する株式の扱い

ところで、会社の設立の2年後に会社が不動産を取得していましたが、担保権の設定はなく、また当時の会社の資金も少なかったため、不動産の取得資金は夫の父が負担していると思われる状況でした。つまり、実質的には夫の保有する株式の払込金は、夫の父が負担していると考えられました。このような状況から、夫の保有する株式も、分与対象財産とはしないこととなりました。

 

3 未払いの役員報酬の扱い

夫が支給を受けていない役員報酬5500万円については、夫が保有する会社への債権として、分与対象財産に含めることとなりました。

 

4 分与額の決定

未払いの役員報酬5500万円と、夫名義の預貯金・有価証券(約3300万円相当)とを合わせた約8800万円を分与対象財産とすることになりました。その2分の1である4400万円を妻に分与することになりました。

 

<参考裁判例>

●夫が経営していた会社保有の財産と会社株式のいずれも内縁解消時の分与対象としなかった(名古屋家審平成10年6月26日判タ1009号241頁)

 

男性Aと女性Bが内縁関係を形成した。内縁関係の開始前より、男性は2つの株式会社を経営しており、内縁開始時点では多数の従業員が存在していた。内縁関係の開始後に夫が2つの会社の株式を取得したことはなかった。

 

AとBは内縁関係を解消することとなった。Bは財産分与を請求した。裁判所は、2つの会社は夫とは別個独立の経済主体になっていたとして会社の資産は財産分与の対象にはならず、さらに、会社の株式も財産分与の対象にはならないと判示した。分与対象財産(夫婦共有財産)としては、内縁期間中の預金の増加額から負債額を控除した額だけが認められた。

 

 

三平 聡史

弁護士法人みずほ中央法律事務所・司法書士法人みずほ中央事務所 代表弁護士

 

本連載に掲載しているケースは、解決に至った事例を基にして、その一部を変更し、また複数の事例を組み合わせてまとめたものです。もちろん、同種案件の処理において参考となるよう、本質的な判断のエッセンスは残してあります。一方で、判断プロセスや解決結果にはほとんど影響を及ぼさない事情については記載を省略しています。なお、ケースの背景事情等については、あくまで架空の設定であることをおことわりしておきます。

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

ケーススタディ 多額の資産をめぐる離婚の実務 財産分与、婚姻費用・養育費の高額算定表

三平 聡史

日本加除出版

高額所得者の場合の財産分与、婚姻費用・養育費算定はどうなる? 標準算定表の上限年収を超えたときの算定方法は? 54の具体的ケースや裁判例、オリジナル「高額算定表」で解説! ●不動産や会社支配権、その他高額資産を…

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