●トランプ氏とバイデン氏による初回の直接対決は、過去に例をみないほど、激しい非難合戦となった。
●両候補の主張に目新しさはないものの、トランプ氏の議論の妨害にバイデン氏はしっかりと対処した。
●市場はバイデン氏を評価、討論会は次回以降形式変更か、7日の副大統領候補討論会も注目。
トランプ氏とバイデン氏による初回の直接対決は、過去に例をみないほど、激しい非難合戦となった
米大統領候補による第1回テレビ討論会は、米東部時間9月29日午後9時(日本時間9月30日午前10時)から開催され、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領が初の直接対決に臨みました。ただ、今回の討論会は、過去に例をみないほど激しい非難の応酬の場となり、司会者であるFOXニュースのウォレス氏が両氏を何度もいさめる場面が目立ちました。
討論会では、6つのテーマが選定され、それぞれ15分の時間が配分されることになっていました。6つのテーマについて、具体的には、①これまでの両候補の歩み、②連邦最高裁判所判事の指名、③新型コロナウイルス、④経済、⑤人種と暴力、⑥選挙の正当性、です。今回のレポートでは、これらに関する両候補の主な発言を振り返りつつ、世論と市場の評価を検証し、今後の選挙スケジュールを確認します。
両候補の主張に目新しさはないものの、トランプ氏の議論の妨害にバイデン氏はしっかりと対処した
新型コロナウイルスについて、トランプ氏は中国の問題とし、ワクチンは非常に早く提供できると述べた一方、バイデン氏はパニックを起こしたのは大統領であると批判し、ワクチンの早期提供には疑問を呈しました(図表1)。また、経済について、トランプ大統領は史上最高の経済を作ったが、中国の疫病のせいで閉鎖せざるを得なかったと主張し、バイデン氏は中小企業の6社に1社が倒産していると反論しました。
人種と暴力について、トランプ氏はオバマ政権時代では今よりも暴力がまん延していたと述べましたが、バイデン氏はオバマ政権時代に犯罪率は15%減っていることを示し、憎悪と分断をあおったのはトランプ氏と指摘しました。総じて両候補の主張にさほど目新しさはありませんでしたが、トランプ氏のヤジなどによる議論の妨害にも、バイデン氏はしっかりと対処できていたように思われます。
市場はバイデン氏を評価、討論会は次回以降形式変更か、7日の副大統領候補討論会も注目
テレビ討論会が終了した後、米株先物が売りに押され、日経平均株価も9月30日の後場で値を下げる展開となりました。市場では、討論会の勝者はバイデン氏との見方から、同氏が掲げる増税への懸念が広がり、株安につながったと思われます。なお、9月30日時点での世論調査では、バイデン氏の支持率はトランプ氏を6.6ポイント上回り、前日の6.1ポイントから差が広がりました(図表2)。
テレビ討論会の2回目は10月15日、3回目は22日に予定されていますが、独立機関である米大統領候補討論会委員会(CPD)は9月30日、今回の討論会を踏まえ、2回目以降は形式を変更する意向を明らかにしました。また、副大統領候補による討論会は10月7日に予定されていますが、民主党の次期大統領候補となる可能性のあるハリス上院議員に注目が集まっています。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米大統領候補による第1回テレビ討論会を終えて』を参照)。
(2020年10月1日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト