●トランプ氏はコロナに感染し、数日間入院へ、トランプ政権の危機管理の甘さが露呈される格好に。
●トランプ氏が執務不能ならペンス副大統領が代行、出馬断念なら新候補としてペンス氏が選出か。
●容体が悪化してもその後の規定は明確、財政協議進展も見込まれ、市場の動揺は一時的とみる。
トランプ氏はコロナに感染し、数日間入院へ、トランプ政権の危機管理の甘さが露呈される格好に
トランプ米大統領は10月2日、ツイッターでメラニア大統領夫人と自身が新型コロナウイルスに感染したことを明らかにしました。また、マクナニー米大統領報道官は同日の声明で、トランプ氏が数日間にわたって首都ワシントン郊外のウォルター・リード米軍医療センターに入院することを公表しました。その後、トランプ氏は抗ウイルス薬「レムデシビル」の投与を受けていると報じられています。
トランプ氏とメラニア夫人以外にも、ホワイトハウス内から複数の感染者が出ています。感染経路はまだ明らかになっていませんが、9月26日にホワイトハウスで開催された、連邦最高裁判所の新判事候補を紹介する行事が、感染拡大の一因との声も聞かれます。この行事では、トランプ氏をはじめ多くの出席者がマスクを着用していなかったため、トランプ政権の危機管理の甘さは否めません。
トランプ氏が執務不能ならペンス副大統領が代行、出馬断念なら新候補としてペンス氏が選出か
トランプ氏は10月3日、ツイッターにビデオメッセージを投稿し、体調はよくなっており、今後数日間が正念場になるとの考えを示しました。トランプ氏は入院先から執務にあたっていますが、仮に執務不能となった場合は、ペンス副大統領に権限が一時的に委譲されることになります。また、ペンス氏も執務不能となった場合は、ペロシ下院議長が大統領代行となり、以下、図表1の順番で権限が継承されます。
また、トランプ氏が出馬を断念した場合、共和党全国委員会(RNC)の委員168人が新しい大統領候補を投票で決めることになり、現段階ではペンス氏が選出される可能性が高いとみられます。なお、大統領選挙の日程が変更される公算は小さいと思われます。日程変更には憲法改正が必要で、これには連邦議員か州議会の3分の2が賛成した後、全米50州の75%が同意しなくてはならないからです。
容体が悪化してもその後の規定は明確、財政協議進展も見込まれ、市場の動揺は一時的とみる
トランプ氏が今後、2週間程度隔離されるとすれば、その間の選挙活動は断念せざるを得ず、10月15日に予定されている第2回テレビ討論会の参加も難しくなります。つまり、選挙戦で苦戦を強いられているトランプ氏は、巻き返しの機会を逸することになり、今回の感染は、トランプ陣営にとって大きな痛手です。一方、バイデン陣営には強い追い風となり、世論調査もおおむねこのような見方を反映しています(図表2)。
今後、トランプ氏の容体が安定に向かえば、市場は徐々に落ち着きを取り戻すと思われます。容体悪化なら、市場でリスクオフ(回避)の動きが強まるとみられますが、前述の通り、その後の手順は明確に規定されており、また、共和党が民主党との財政協議を進めることも想定されることから、市場の動揺は一時的と考えます。いずれにせよ、バイデン氏優勢の状況は変わらないと予想します。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『トランプ米大統領のコロナ感染~市場への影響を考える』を参照)。
(2020年10月5日)
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
シニアストラテジスト