今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が、相続の専門家として、「withコロナ時代の税務調査」について語ります。

新しい生活様式に基づく実地調査のスタイルとは

日本経済新聞社などで2020年9月23日、新型コロナウイルス感染防止のため中止にしていた新規の訪問税務調査を10月から再開する、というニュースが報じられました。

 

連日公表されている新規感染者数の推移を見る限り未だ終息の目途が立たない中での再開には国民感情として不安や疑問を覚える一方で、長期的な調査の自粛は課税逃れの状態を放置し続け税収減にもつながる由々しき問題であることからやむを得ない決定であるとも思います。

 

では、再開される税務調査は、従来とは異なりどのよう形で行われていくのでしょうか。

 

国税庁から発表された「国税庁における感染防止策について」(2020年9月18日)では、税務調査に際して、以下の感染防止策を行うとしています。

 

(出張前)
以下について管理者の確認を受ける
「検温の実施」
「手洗い(手指消毒)の実施」
「咳・発熱等の有無の再確認」

(出張先)
「マスクの着用の徹底(納税者等にも協力を依頼)」
「応対時には、一定程度の距離を保ち、会話の際、可能な限り真正面を避ける」
「窓や扉を開け、定期的に換気」
「職員の人数や滞在する時間を可能な限り最小限にする」

 

内容としては、新しい生活様式に沿ったごく当たり前のものですが、特筆するところとしては、一番下にある「職員の人数や滞在する時間を可能な限り最小限にする」でしょうか。

 

職員の人数については通常2名のところを1名にしたり、滞在する時間については通常1日(相続税の調査の場合)のところを半日で行う、といった方法もケースによってはあるのかもしれません。

 

感染予防を徹底(※画像はイメージです/PIXTA)
感染予防を徹底(※画像はイメージです/PIXTA)

再開されても、やはり慎重ムードは払拭できないか...

相続税の税務調査はもっぱら、被相続人(故人)の自宅にて調査担当者2名・相続人・税理士(依頼していれば)の最低4名が同席のもと行われます。

 

すなわち、様相としてはいわゆる「3密」で典型であるため、いくら上記の感染防止策を行うといっても完全に安心して臨めるというわけではありません。

 

国税通則法第128条では、調査を受けることを拒否した場合等の罰則規定を定めており納税者には調査の受忍義務が課されていますが、このコロナ禍において同規定が適用されるのかは疑問を感じます。

 

ましてや、同席する相続人は、被相続人の配偶者をはじめ高齢の方である場合が多く、高齢であることなどを理由に実地調査を断ることは正当な理由として認められるべきであるようにも思います。

 

税金の徴収も大切ですが、国民の健康や命に勝るものはありませんので、国税当局としては調査再開を決めたものの慎重な対応を迫られると見られます。

 

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