今回は、相続税申告を数百件経験した相続・事業承継専門の税理士法人ブライト相続の山田浩史税理士が、相続の専門家として、「withコロナ時代の税務調査」について語ります。

実地調査が減っても、調査全体は減らない?

そこで注目されるのは、郵送や電話等の簡易な接触を通じて納税者による自主的な申告を促す「行政指導」という方法です。

 

税務署から納税者に対して申告内容の確認等を行う方法は、長時間の面談を伴う「実地調査」の他にこの「行政指導」があります。

 

実地調査との大きな違いは、結果として申告もれが判明し修正申告が必要になった際、行政指導の場合は加算税がかからない点です。

 

(延滞税はかかり、また、申告を期限内に行わなかった方が期限後の申告を行う場合には無申告加算税=5%がかかります)

 

少なくともコロナ終息まではおそらく行政指導が例年比べて多くなるのではないかと思われます。

 

ちなみに、今年の4月に筆者が立ち会う予定であった実地調査はもちろん中止されましたが、行政指導に切り替える形で申告もれ財産が確認され修正申告の手続きを行うこととなりました。

 

たとえば、被相続人名義の財産や相続時精算課税贈与財産*注1のもれがある場合など明らかに修正申告が必要なケースでは行政指導を行い、名義預金*注2や過去の多額の入出金内容の解明などのために納税者との綿密なやり取りが必要なケースでは実地調査を行う、といったように従来より調査手法の使い分けを明確にし、実地調査の対象が限定化されるのではないかと考えられます。

 

*注1 相続時精算課税贈与
親から子などの一定の親族間における合計2,500万円までの贈与には贈与税は課税されませんが、贈与をした方が死亡した際には贈与財産の金額を相続財産に加算するという制度です。制度開始の平成15年付近に利用されているケースも多く、贈与の事実を失念してしまっている方が少なくありません。


*注2 名義預金
お金を拠出したのは被相続人であるものの名義が相続人等になっている預金です。
預金残高がその口座名義人の収入状況等から勘案して貯蓄し得ないであろうと考えられる金額である場合には、被相続人のお金がそこに流れておりその預金も相続財産なのではないかという疑念を持たれるため注意が必要です。

 

●まとめ

2020年9月26日付で国税庁から緊急のお知らせとして、国税庁の職員(男性・四十代)が新型コロナウイルス感染症に感染していることが判明したという発表がありました。調査方針などには直接関係のないことかもしれませんが影響は気になるところです。

 

いずれにせよ、国税当局による監視の手が緩むことはありません。実地の調査が行いづらい世の中にあるからといってやらなければならない申告をなおざりにしたり、おざなりな申告をしても、これまで通り国税当局からの追及は免れないと考えるべきでしょう。

 

税理士はもとより、納税者となる方々にとっての税務申告に対する備え、持つべき姿勢に何一つ変わるところはないということはお伝えしたいと思います。

 

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