約8割もの人が病院で亡くなる時代。誰もが、病名・余命告知や治療方針の希望などを、健康なうちから周囲に意思表示をしておく必要があります。今回は、シニア生活文化研究所・代表理事の小谷みどり氏の著書『ひとり終活』より一部を抜粋し、独居老人だからこそ考えておくべき「人生の幕引き」や、身体が不自由になってしまってもひとり暮らしを継続できる「行政支援」について見ていきます。

事故が起きやすい浴室は「バリアフリー工事」要検討

浴室はトイレ以上に事故が起きやすい場所です。浴槽のまたぎ越しが高い、あるいは浴槽底が深いと、ひとりで入るのはおろか、介助する方も一苦労です。浴室の床や浴槽の底がつるつるした素材だと、すべって転倒する危険性もあります。

 

また特に冬場は、浴室でヒートショックという意識障害を起こし、水死する高齢者が後を絶ちません。暖房の効いた部屋から寒い脱衣所で裸になり、熱いお風呂に入ると、血圧の乱高下や脈拍の急激な変化によって、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞などを起こしやすいのです。毎年約1万人の高齢者が、ヒートショックで死亡しているという推計もあるほどです。

 

東京都健康長寿医療センターなどの研究によれば、1980(昭和55)年以前に建てられた住宅は断熱性能が弱く、ヒートショックで水死する高齢者の割合が、新しい住宅に比べて多いそうです。これを防止するには、浴室を二重窓にする、脱衣場に暖房機具を設置する、床暖房で全体を暖めるなどの方法がありますが、大がかりな取付工事が不要な浴室暖房機はとても便利です。

 

改修には最低でも数十万円の費用がかかるので、なかなか踏み切れない人もいるかもしれません。しかし、介護保険には「高齢者住宅改修費用助成制度」があり、「要支援・要介護」と認定されている人が住んでいる住宅であれば、一生涯20万円までの工事費用の9割が支給されます(支給上限は18万円)。

 

助成の適用となる工事は手すりの取り付け、床段差の解消、床面素材や扉の取り替え、洋式便座の取り付けなどに限られていますが、介護の必要度合いに応じて、何回かに分けて改修した場合でも助成対象となります。

 

また介護保険支援とは別枠で、多くの自治体で、高齢者の自宅のバリアフリー工事を支援する制度を独自に設けています。前年所得税が非課税の世帯、要支援・要介護の認定を受けている人などと、助成対象者を限定している自治体もありますが、介護認定を受けていなくても運動能力が低下している高齢者であれば、助成を受けられる自治体もあります。

 

補助金は30万〜50万円程度ですが、工事をする前に申請が必要なので、どんな制度があり、どんな手続きが必要なのかを、事前に市区町村の窓口に相談しておきましょう。安全で使いやすいトイレやお風呂は、転倒して寝たきりや要介護になることを防ぐための自衛策でもあるので、元気なうちにリフォームを考えたいものです。

 

 

 

 

小谷みどり 

シニア生活文化研究所代表理事

 

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ひとり終活

ひとり終活

小谷 みどり

小学館

元気なうちは気兼ねの要らない自由な暮らしがいいと思っていても、ひとり暮らしの人は、将来に不安を感じることも多い。 介護が必要になったら誰が面倒を見てくれるのだろう? 万が一のとき誰にも気づいてもらえなかったら…

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