その理由としてあげられている事情は
・夫が不倫して家を出た際に妻に建物を渡したのみで、その後40年間の別居期間中全く生活費等を渡さなかったこと。
・夫が不倫相手と会社を3つ経営し、資産家であったこと。
です。
なお、このケースは昭和12年に結婚して、昭和24年に夫が不倫してそれから別居状態となり、離婚裁判を起こすも認められず、最終的に別居してから40年以上たった平成元年に、ようやく裁判で離婚が認められたというケースです。判決言渡時には夫も妻も70歳を超えていました。
このように、かなり特殊なケースではありますが、
・別居後に生活費などの援助をしていたかどうか
・不倫した配偶者が資産を持っているか(高収入か)
という点になるでしょう。したがって、離婚を求める側としては慰謝料を増額されないためには、別居後も生活費はしっかりと払う必要があるでしょうし、慰謝料を求める側としては、別居後に生活費が支払われていないならばその事情を裁判所に訴えて慰謝料の増額を求めることになります。
【判旨:東京高等裁判所平成元年11月22日判決】
控訴人:夫、被控訴人:妻
「控訴人は、昭和24年8月ころから丙野月子と同棲し不貞行為を継続しているものであり、しかも被控訴人と別居するに際して文京区○町所在の建物(当時の価格24万円)を与えたほかには40年間何らの経済的給付をせずに今日に至つたのであつて、被控訴人を悪意で遺棄したものというべきであるから、控訴人には民法第709条に基づき被控訴人が受けた精神的損害を賠償する義務がある。
そこで慰籍料の金額について検討するに、被控訴人は破綻の原因を作出していないのに自己の意思に反して強制的に離婚させられ、控訴人が不貞の相手方たる丙野月子と法律上の婚姻ができる状態になることは被控訴人に多大の精神的苦痛を与えることは明らかであり、控訴人が丙野月子と生活して2人の子供も生まれ、一家によつて会社を経営し、相当程度の生活を営んでいることは前記のとおりである。
一方、被控訴人は実兄の家に身を寄せ、今日まで単身生活を送つてきたこと、その他一切の事情を斟酌するならば、被控訴人の精神的苦痛(控訴人が破綻原因を作つてから本件慰籍料請求反訴状が控訴人に送達された平成元年7月28日まで)を慰籍するには1500万円をもつて相当というべきであり、控訴人は被控訴人に対し右金員及びこれに対する不法行為の後である平成元年7月29日から完済に至るまで民法所定年5分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。」
※本記事は、北村亮典氏監修「相続・離婚法律相談」掲載の記事を転載・再作成したものです。
北村 亮典
こすぎ法律事務所 弁護士
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