「9/28~10/4のFX投資戦略」のポイント
[ポイント]
・米ドル/円は先週、104円割れ寸前で急落一段落となった。これは、米大統領選挙前は小動き、90日MAからのかい離率が±2%以上に拡大しないという「アノマリー」通りともいえる。
・一方「アノマリー」では、選挙が近付く中で90日MAからのかい離率が±2%を超えると、年末までに±5%以上へ急拡大に向かう。今回に当てはめると、選挙が近付くなかで104.5円を下回ったら101円へ、108.7円を上回ったら112円へ、大相場が始まる可能性に注目。
方向感の定まらない米ドル/円、今後はどうなる?
米ドル/円は、先週末104円割れ寸前まで下落したものの、その後は105円台後半まで戻ってきました(図表1参照)。相変わらず、方向感の定まらない展開が続いています。
そもそも米大統領選挙年の米ドル/円は、このように方向感の定まらない小動きが続くことが多かったのです。そして、選挙が近付くと一転して一方向への大相場に「豹変」するところとなりました。論率的な説明が難しいのですが、頻繁に繰り返されるパターンを「アノマリー」と呼びます。小動きから大相場への「豹変」は、米大統領選挙年の米ドル/円では比較的よく知られた「アノマリー」です。
方向感の乏しい展開が続くなかで、米ドル/円の90日MA(移動平均線)からのかい離率は、3月の「コロナ・ショック」とされた乱高下が一段落した後は、±2%を大きく超えられない展開が続いてきました(図表2参照)。それこそが、米大統領選挙前のパターン通りともいうことができます。
たとえば、「米大統領選挙前の米ドル/円は小動き、ところが選挙前後からとたんに一方向への大相場へ豹変する」といった米大統領選挙年の米ドル/円「アノマリー」の典型が2000年や2012年です。当時の米ドル/円の90日MAからのかい離率は、選挙前まで確かに±2%を大きく超えられない展開が続いていました(図表3、4参照)。
ただし、この2つのケースとも、大統領選挙前後に、米ドル/円の90日MAからのかい離率が±2%を超えると、そのまま年末までに一気にかい離率は±5%以上へ急拡大、そのなかで年初来の高安値更新となりました。
これを参考にすると、先週、米ドル/円急落が104円割れを前にして行き詰ったのは、この9月は、11月米大統領選挙前後の一方向への大相場にとって、まだ機が熟していなかったということかもしれません。
一方で、このまま米大統領選挙年のアノマリーが今回も機能するなら、11月の選挙前後に、米ドル/円の90日MAからのかい離率が±2%以上に拡大、それは年末までに同かい離率が±5%以上に拡大するトレンド相場へ豹変している可能性を意識する必要があるでしょう。
ちなみに、足元の米ドル/円90日MAは106.6円程度なので、これを±2%以上超える水準は、上方向では108.7円、下方向なら104.5円といった計算になります。その水準を超えてくるならば、今回も米大統領選挙年のアノマリーは機能している可能性があるため、年末までに同かい離率が±5%以上に拡大するかもしれません。
具体的に、上方向なら112円程度、下方向なら101円の更新を目指す動きに「豹変」が始まっている可能性があります。
新政権が決まると、相場が動きやすくなる?
今回、私は選挙前の小動き、選挙前後からの大相場といった「米大統領選挙年のアノマリー」として、2000年と2012年のケースを紹介しました。前者は、クリントン政権2期8年を受けて、共和党ブッシュ vs 民主党ゴアの新顔対決となったものの、前代未聞の一部投票やり直しとなった大統領選挙。そして後者における大統領選挙後の大相場は、その後「アベノミクス」と呼ばれるようになりました。
「選挙前の小動き」はそれほどではなかったものの、選挙前後から一方向への大相場が展開したという意味では、前回2016年は「トランプ・ラリー」として、また2008年は「リーマン・ショック」という名で知られています。
このように選挙前後から一方向へ大きく動き出すことが多かったのは、新しい政権が決まり、政策の方向性が明確になることで相場も動きやすくなるといった面があったのではないでしょうか。そんなふうに考えると、今回の場合も、新しい政権が決まることを受けて、米ドル/円にも方向性が出る可能性に注目すべきといえるでしょう。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティ FX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。